ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.174

はしご酒(3軒目) その三

「スキ! ト シット ト」

 好きです。

 ホントに好きなんです。

 「ナニ、それ」と思われてしまうかもしれないが、「好き!」なモノがあるということは素晴らしいことだ、と、つくづく思う。まさに、「好きこそものの上手なれ」。あの「論語」の中にも、ソレと同じようなコトが書かれているという。はたして、孔子は、いったいナニが好きだったのか。気にならないと言えばウソになる。

 もちろん、(法律が、必ずしも正しいモノなどとは微塵も思っていないが、とりあえず)合法的なものである必要はある。好きだからといって、ナンでもカンでも「お好きなように」というわけにはいかない。しかしながら、たいていのコトは大丈夫。自信をもって好きなモノに没頭すればいい。さすれば必ず、道は開けてくるはずだ。間違いない。

 そんな、好き!、と、人生、とが、合体しているような人たちに、私は、嫉妬する。

 憧れからか、腹立ちからか、それとも、自暴自棄から、なのか。

 そして、私が、嫉妬してきた人たちは、皆、口を揃えて好きなモノを好きなように熱く語る。ドコまでも熱く語るその表情には、トンでもないぐらい「好き!」が溢れている。

 そんな、好き!、と、やりたいこと、やっていること、とが、合体しているような充実感に、人知れず、不本意ながらも、私は、嫉妬してしまうのである。ましてや、それが、生業(ナリワイ)となっているなら、その充実感は紛れもなく極上級。なんの取り柄も見当たらない私ごときでは、その嫉妬、無理のない話なのかもしれない。

 いま、隣で、妖艶なピンク色のグラデーションのカクテルを味わいながら、「いいわ~、これ」などと宣いつつ、満面の笑みを浮かべているZさんにとっての「好き!」は、やはり、「着物」だろう。

 そう、和の究極のアパレル、着物。この着物がもつ、完成度、奥深さ、アイデンティティ、は、私ごときでも容易に察することができる。

 そして、おそらく、このあと、ジワジワと、熱き着物談義の花が咲き始めるに違いないと、私は、妙な期待を、ワクワクワクと、秘かに抱いたりしていたのである。(つづく)