はしご酒(2軒目) その四十九
「シマグニコンジョウ ト タヨウセイ パラダイス」③
「気~わる~せんといてや。自分自身に言~聞かせてるようなもんやから、チャッチャと聞き流してもらわんと」、とOくん。いつになく、少し、後悔しているような表情。
気を悪くなんてしてはいない。けれど、結局のところ、いわゆる異文化、とは、いったい、なんなのか。どう捉え、どう理解すればいいのか。そのあたりが、一気に、ゴチャゴチャっとわからなくなってしまった。と、いう感じではある。しかも、この感じ自体が、おそらく、「頭でっかち」というコトになるのだろうから、もう、ほとんど、お手上げ状態だ。
「文化は個性や」
文化は、個性?
「際立った個性と際立った個性との対等な、パワフルな、ぶつかり合いこそが多様性やと思うんやよな」
個性のパワフルなぶつかり合い、こそが、多様性?
「ぶつかり合い、と、潰し合い、は、根っから、ちゃうもんやから」
たしかに違う。
「せやからこそ、あらたなる熱く燃えるエナジーを生むんや、と、思てる。多様性は、エナジーやからな」
多様性は、エナジー?
「言い換えるなら、『多様性みたいなもん、どうでもよろしいやろ。むしろ、邪魔なんですわ』みたいなことを平然と、あるいは憎悪をもって、宣っているような、個人も、組織も、国も、星も、全て、トンでもなくエナジー欠乏状態やっちゅ~、ことや。エナジーなきモノに未来なんか、絶対にあらへん」
多様性なきモノにエナジーなし。そして、エナジーなきモノに未来なし。と、いうことか。
なるほど。だから、ナニも生まれないし、ナニも始まらない、のだろう。
「アンタが言おうとしてる、その、ナンチャラタヨウセイパラダイス。そいつの面白さは、そのへんにあるはずや、マチガイあらへん」
Oくんの表情には、もう、後悔など微塵もない。
そして、私も、ほんの少しながらも、なんだか、妙に、ワクワクしてきた。
そんなワクワク感にテロリテロリと絡まりながら、福島のキレイな中取り無濾過原酒が、五臓六腑に沁み渡る。
(つづく)