ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1150

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と八十一

「ソンナコトハ ドコニモ カカレテイナイ」

 「肉体的には男性同士ということになるかもしれないカップル、いわゆるゲイカップルが、愛し合い、結婚を決意し、神前にて式を挙げることに」

 ん?

 「そう決意した理由が、今まで身近なモノとして親しんできた神社が、性的マイノリティーへの理解が負の方向にカッチンコッチンであった、というコトなわけ」

 負の方向に、カッチンコッチン?

 「そのコトに大きなショックを受けたその二人は、問題提起の意味も込めて、ココは意地でも神前結婚を、と、考えた」

 あっ。

 それ、ニュースで見たような気がする。

 「たしか、神道絡みの政治団体みたいなトコロがつくった文書が、あまりにも差別的であったのですよね」

 「そうそう。メチャクチャ、カッチンコッチンに差別的だった。未だに、『同性愛は後天的な精神の障害、または依存症』などと書かれたりしていたんだからな」

 なんと。

 あらためて、ドウしようもないほどトンでもない偏見と無知にまみれまくっているな、と、マジに、思う。

 「神道が、神社が、多様性を認めることができないなんて、八百万(ヤオヨロズ)の神さまたちに笑われてしまいますよね」

 「その通り、笑われまくられるだろうよ。そういえば、二人の結婚式をOK(オーケー)したその宮司さんも、ソレと同じようなコトを宣っていたな。そもそも、神道の神さんは多様性に満ちている、ってね」

 あっ、あ~。

 完全に思い出した。

 「そう、そうでした。多くの、ほとんどの神社が、古(イニシエ)より神道では同性の婚姻を前提としていないという、そんなスタンスであった中で、その宮司さんだけは、神道の神さまはどの神さまも、同性の婚姻を否定していない、と。そんなコトはドコにも書かれていない、と」

 「興味深いよな。一方では、異性同士の婚姻を前提としていると宣い、もう一方では、同性同士の婚姻を否定していないと宣う」

 「神さまは、本当にダメだと思うコトは禁止すると思うのです。でも、禁止しなかった。それは、禁止する理由が見当たらなかったからです」

 「ほら。よく、当時は、まだ、将来に、そういう同性同士の、などというコトが起こるとは、誰も、思いもしなかったから、などと宣う人がいるだろ。思いもしなかったから、禁ずるコトをしなかった、みたいな。ソレって、神さんをバカにしすぎだよな。神さんは、ナニもカも全て、お見通し。思いもしなかったなんて、あり得ない。むしろ、思いもしなかったのは、神さんではなく、視野も思考も内向きで、広がりのないカッチンコッチンの人間の方だろ」

 内向きで広がりがない、か~。

 そういえば・・・。

 「その宮司さん、若い頃に海外で暮らされていたらしくて、おそらく、そのコトも、彼に大きな影響を与えていると思います」

 「八百万の神に国境などないからな。狭い世界で、都合のいい一部のカッチンコッチンの神さんだけをピックアップして、あるいは、つくり出して、仕立て上げて、かくあるべきなどと宣っている場合じゃねえんだよな~」

 八百万の神に、国境などない、か~。

 国境なき医師団、ならぬ、国境なき八百万の神。こんな今だからこそ、こんな社会だからこそ、そうした、国境を越えた、多様性に満ち満ちた神々が、まさにドンピシャなのかも。

 「話が、少し、ズレてしまうかもしれないが」

 ん?

 「あの『LGBT理解増進法』においても、どさくさに紛れて、いつのまにか、ラストのラストで、『差別は許されない』から『不当な差別はあってはならない』へ、見事なまでトーンダウン。さらに、オマケに、『すべての国民が安心して生活できることとなるよう留意する』などという姑息な補足まで、加えられたりしたからな~」

 そう、そうだ、そうだった。 

 その、その不当な差別、って、ナニ?

 認められる、不当ではない差別が、この世には存在するということ?

 安心して生活できることとなるよう留意する、の、その留意、って、ナニ?

 差別されている側が、差別している側に対して留意しなさいということ?

 多様性を認めない、すべての国民、って、いったい、どんな「すべて」なのだろう。

 やっぱり、絶対に、八百万の神さまたちに笑われている。笑われまくっている。間違いない。

(つづく)