ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.131

はしご酒(2軒目) その三十三

「ゼッタイ ニ キイテイナイ」①

 この私も、Aくんの熱弁を聞いているうちに、不覚にも、異次元にワープしてしまったこと、一度や二度ではない。

 実に失礼な話だとは思うが、居酒屋空間においては、ご容赦願おう。ノミニケーション(居酒屋でのコミュニケーションのこと。しかしながら、ほとんど耳にしなくなった。すでに死語ということなのか)などというものは、そもそもそんなものなのである。

 とはいえ、聞いていないでは済まされない、そんな場面での「絶対に聞いていないな」は、申し訳ないが、ご容赦は願えない。

 切実な、生命にかかわる、取り返しがつかない、子孫たちに禍根を残す、そんなものに対する姿勢として、「絶対に聞いていないな」は、やはり、けっして許されるものではない。

 「貴重なご意見ありがとうございます。なんか、絶対に、そんなこと、思てへんよな~。貴重なご意見やって思てたら、その場で、即、受け止めるはずやし、受け止めて、協議するはずや、普通は」、と、珍しく怖い顔のOくん。

 たしかに、その「貴重なご意見ナンちゃらカンちゃら」、会議などでの定番の鎮静化フレーズではある。とりあえず「貴重なご意見」、と、エセ賛辞を送ることで、その場をクールダウンして乗り切ろう、という、実に姑息な会議運営ツールの一つなのであろう。

 たしかに、ソレも、なかなかなフレーズだとは思うが。私が、まず絶対に聞いていないな、と思う、シモジモじゃないエライ人たちによるフレーズの、頭抜けたナンバーワン。ソレは、コレだ。

 「真摯に受け止めさせていただきます」

 このフレーズを宣うときは、絶対に、聞いていない。

(つづく)