ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.137

はしご酒(2軒目) その三十九

「ダラダラ ト ユダン ト シツゲン ト ホンショウ ト ソンゲン ト」

    魅惑のダラダラ。

 極楽ダラダラ。

 ダラダラは、多くの人を魅了する。

 もちろん、ダラダラのダラは堕落のダラ。打倒ダラダラ!、ダラダラ退散!、と、宣う、アンチダラダラ派の方々も、数多くおられる。

 しかしながら、日々緊張感をもってシャキッと過ごす、など、そうそうできやしないわけで、「アイラブ、ユルユル」、「アイラブ、ボンヤリ」、「アイラブ、ダラダラ」、の、私には、このダラダラワールド、そう簡単には手放せそうにない。

 すると、いつのまにかトイレから戻っていたOくん、「国会議員って、失言をペロッとしてしもた、そのたんびに、これからは、もっと、緊張感をもって、って、よう言うてはるやん」、と。

 緊張感をもって、か~。

 そういえばそうだ、よく耳にする。

 「せやけど、緊張感をもってへんかったら、失言してしまう、っちゅうのも、いかがなもんかな~」

 緊張感をもっていなかったら、失言する、か~。

 単なる「いいそこまちがい」ならまだしも、油断したら、(しかも、かなり悪質な)失言をする、というコトは、油断したら、(しかも、かなり悪質な)本性が出てしまう、と、いうことなのか。

 そう、失言と本性。

 と、すると。もともと、どんな(しかも、どれほどまでに悪質な)本性なのだ。どんな(しかも、どれほどまでに悪質な)ものの考え方をしているのだ。などと、どんなどんなと推し量ってみたりしているうちに、ちょっと、どころか相当に、グツグツと腹が立ってきた。

 トにもカクにも、ユルユルでも、ボンヤリでも、ダラダラでも、悪しき道にだけは足を踏み入れない、という、そんな、人としての「尊厳」みたいなもモノだけは、けっして見失わない、そんな私でありたい。そんな、シモジモじゃないエライ人たちであってほしい。のに。

 「では、僕の尊厳をかけた一品を」と、私の前にスッと出された、お兄さんオススメのそのアテは、カブラの酢漬けに、ナニやら怪しい黄茶色の粉がパラパラっとかけられた、そんな一品であった。

 またまた、ソレを、私よりも先に電光石火で口元まで運んだOくん、「うまいわ~、この粉、すりおろしカラスミやんね~、カブラの酢漬けにも合いまんねんな~、ええわ~、かなりええ、かなりええカラスミやわ~」、と、饒舌に絶賛。

 遅れはとったけれど、Oくんに続いて私も一口。

 んぅ~。たしかに美味い。

 お兄さんお手製のこの「尊厳カラスミ」。そのあたりのシモジモじゃないエライ人たちと違って、まず、絶対に、失言などしそうにない。(つづく)