はしご酒(2軒目) その二十六
「クウキ ヲ ツカム」①
ライブ感が好きだ。
お家(ウチ)で、時を選ばず、ノンビリ、ジットリ、ネットリ、と、個人で楽しむ快感というものも、もちろん否定はできない。実家には、イヤというほどレコードがあるし、巨大なスピーカーもドドンと鎮座している。
けれど、やはりライブ感がいい。ライブ感の醍醐味である「空気感」がいいのである。
落語にしても、歌舞伎にしても、ジャズにしても、(Aくんが大好きであった)ハードロックにしても、お家から飛び出してこそのライブ感、空気感、であるような、そんな気がしている。
とくに「能」においては、さらなるスペシャルティな空間を求めたい。もちろん、能楽堂も(空模様を気にする必要もなく)いいのだけれど、やはり、神社などでの奉納能がもつ一種独特な、ピーンと張り詰めたような静寂の冷たさ、とも言える、そんな空気感には、到底かなわない。
Aくんは、そんなライブ感、空気感、こそが、授業が本来もつ醍醐味である、と宣っていた。そして、もっとも大切なことは、その空気を掴(ツカ)むこと、だと。
この「掴む」、対峙するわけでも、抗うわけでも、媚びるわけでも、振り回されるわけでもなく、自然に一体化しながら、自在に展開できる、そんなイメージだろうか。相変わらずのAくん独特な表現だけに、なかなか難しい。
このご時世、デジタル化も結構だけれど、あまりにも行き過ぎたデジタル頼みでは、アナログな、生身の、ライブ感溢れるその空気を掴み損ねてしまい、ソコではもうナニも生まれない、などというコトに、なってしまうかもしれない。(つづく)