ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.811

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と四十二

「ホップ スモールステップ ジャ~ンプ!」③

 「学びは、ホップ、ステップ、ジャンプ。でも、その、ホップ、ステップ、ジャンプ、が、どの子どもたちに対しても、同じ歩幅で、同じスピードで、同じタイミングで、同じ高さで、ジャ~ンプ!、というトコロに、学校という集団教育の場における『学び』の致命的な弱点、が、あるんじゃないのか、と、どうしても思ってしまうわけ」

 ホップ、ステップ、ジャンプ、の、致命的な弱点?

 「ホップは、動機づけ。好奇心の芽生え。湧き上がるワクワク感と言ってもいい。そして、ステップ。ステップは、学習。コイツが厄介。どう考えてもステップは、できる限りスモールステップでなければならないはず。だから、当然、一人ひとりが達成可能な、段階的で具体的な目標設定であるべきなんだけれど、コレが極めて難しい。たいていの学校の先生は、ココで限界を感じ、白旗を上げてしまう。だから、どうしても、子どもたち一人ひとりが、本来、もっているはずの力も、ジャンプも、悲しいかな、引き出すことも伸ばすこともできなくなる。そして、そんなコトをしているうちに、ジワリジワリと子どもたちも、限界を感じ始め、希望をなくし、絶望感に苛(サイナ)まれる」

 お、重たい。 

 おそらくAくんは、この、ひたすら重たい持論、「ホップ、ステップ、ジャンプ」理論、を、披露せんがために、この爽やかな酒を、わざわざ奥から引っ張り出してきたのだと思う。そんな気がする。それほどの重たさなのである。

 「それでも、僕が、ある時期から勤めることになった支援学校、あ、あ~、養護学校のことね、ソコでは、完璧とまでは言わないまでも、かなりのレベルまで細やかに、一人ひとりの目標が段階的に設定され、慌てることなくコツコツと、ユッタリと、スモールステップが幾重にも折り重なり、積み上がっていくような取り組みが、授業が、ギリギリのところで、どうにかこうにかなされていたような気がするわけよ」

 Aくんが養護学校の先生だったなんて、今、初めて耳にした、と、思う。

 ソコで、彼は、いかなる授業を展開していたのだろう。マジックミラー越しにでもいいから、その授業を見てみたかったな。

(つづく)