ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.92

お会計③

 店内を覗き込む、そのお客さんには、タイヘン申し訳ないのだけれど、私は、「ガッカリ」感を、これ以上ないというぐらい身体中の穴という穴から放出させながら、(とても短い間であったとは思うが)心身ともに動きを止めてしまっていた(と、思う)。

 そんな失礼な私とパチリと目が合った、そのお客さんは、なにやら、彼の頭の中の保存データを片っ端からカタカタカタカタと検索している様子で、しばらくの間、お互いに見合ったまま立ち尽くしていた。

 

 「あ~、Aくんの~、友だちの~、やんな~」

 彼の目がキラリと光ったかと思われたその瞬間に発せられた、そのOosacan (大阪人)な「やんな~」は、私のフリーズした心身を完全に溶解してくれた。

 

 「あ~、Aくんの~、友だちの~、ですよね~」

 

 そして、おじさん二人は、ほぼ同時に「ご無沙汰してます」と言いながら、ペコリと軽く頭(コウベ)を垂れ合った、のである。

 すると、背後から「すみませ~ん、今夜はも~、店じまいさせて~、もらいます~」、と、親父さんの、大きい声だけれども、十分に申し訳なさそうな声が、シュルシュルシュル~とコチラまで飛んできた。

 そんなこんなで、「ガッカリ」感から一気にV字回復した、かなり失礼な私と、実に久しぶりのOosacan (大阪人)な彼とで、ちょいと今宵は、はしご酒、と、洒落込むことに、あいなったのだ。(つづく)