お会計②
その建てつけの悪さを際立たせるようなガタガラガタガラ~という音の中に、あの(ただならぬ)Aくんの気配が漂う、そんな気がした、と、そのときは、紛れもなくそう思った。
そして、歳のせいか、瞬時にピントが合う、ことなど難しくなってしまっていた私の視力(もちろん、酔っていたということもあるけれど)も、可能な限りの全神経を集中させることによって、どうにかこうにか、その扉のピンポイントを凝視することができていた、のだ。
そんなこんなで、気持ち的には、そして、私の口の周りのそこかしこの筋肉的には、「わ~、Aくん、お久しぶり~」、などという感じに、隅から隅までなっていた。にもかかわらず、4分の1ほど開けられたその扉の隙間から、ヌルリと店内を覗き込むその顔は、少なくとも、私の気持ちと口の周りのそこかしこの筋肉が、そう期待し、そう思い込んだ、あの「Aくん」では、残念ながら、なかったのである。(ガクッと、つづく!)