ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.93

はしご酒(2軒目) その壱

「アクイナキ ムシンケイ」①

 「悪意なき無神経、悪意ある有神経より、ウンとマシやと思うんやけどな~」

 ん?、悪意ある有神経より、ウンとマシ?

 さすが、Aくんのお友だち。この「唐突」感、Aくん同様、かなりパワフルだ。ナンのコトやら、気持ちいいほどサッパリわからない。

 そんなおじさん二人が、ソコからタラタラと10分ほど歩いたのち、暖簾をくぐったその店は、30代後半ぐらいのもの静かな若者が、一人で切り盛りしているカウンターだけの小さな居酒屋である。

 「いらっしゃい」

 軽やかながらも落ち着いた店主の声が、ス~ッと心地よく耳に届く。

 過去に2度ほどしか伺っていないが、その店主の声で、一気に、緊張が和らぐ。

 「お祭りの日、以来ですね」

 あ、あ~。

 そうだ、そうだった。祭りの日の帰りに、立ち寄ったのだ。

 その一言で、店主との距離もグッと縮まる。

 AくんのOosacan(大阪人)なお友だち、は、席に着くなり瓶ビールを注文した。注文の仕方まで唐突感に溢れている。

 (そんな、AくんのOosacan(大阪人)なお友だち、だけれど、いつまでも「AくんのOosacan(大阪人)なお友だち」ではあまりにも長ったらしいので、ココからは「O(オー)くん」と呼ぶことにしよう)

 Oくん。そう、Oくん。うん、いい響き、いい感じだ。

 Oくんと、まずは再会を祝してビールで乾杯。

 「カンパイ」

 よく冷えたビールが喉を駆け降りる。お通しの小魚の佃煮も、実にいい塩梅だ。

 そうそう、コレだ、この味だ。

 おかげで、僕の舌の記憶も呼び起こされ、完全に、覚醒した、かな。

(つづく)