はしご酒(2軒目) その壱
「アクイナキ ムシンケイ」①
「悪意なき無神経、悪意ある有神経より、ウンとマシやと思うんやけどな~」
ん?、悪意ある有神経より、ウンとマシ?
さすが、Aくんのお友だち。この「唐突」感、Aくん同様、かなりパワフルだ。ナンのコトやら、気持ちいいほどサッパリわからない。
そんなおじさん二人が、ソコからタラタラと10分ほど歩いたのち、暖簾をくぐったその店は、30代後半ぐらいのもの静かな若者が、一人で切り盛りしているカウンターだけの小さな居酒屋である。
「いらっしゃい」
軽やかながらも落ち着いた店主の声が、ス~ッと心地よく耳に届く。
過去に2度ほどしか伺っていないが、その店主の声で、一気に、緊張が和らぐ。
「お祭りの日、以来ですね」
あ、あ~。
そうだ、そうだった。祭りの日の帰りに、立ち寄ったのだ。
その一言で、店主との距離もグッと縮まる。
AくんのOosacan(大阪人)なお友だち、は、席に着くなり瓶ビールを注文した。注文の仕方まで唐突感に溢れている。
(そんな、AくんのOosacan(大阪人)なお友だち、だけれど、いつまでも「AくんのOosacan(大阪人)なお友だち」ではあまりにも長ったらしいので、ココからは「O(オー)くん」と呼ぶことにしよう)
Oくん。そう、Oくん。うん、いい響き、いい感じだ。
Oくんと、まずは再会を祝してビールで乾杯。
「カンパイ」
よく冷えたビールが喉を駆け降りる。お通しの小魚の佃煮も、実にいい塩梅だ。
そうそう、コレだ、この味だ。
おかげで、僕の舌の記憶も呼び起こされ、完全に、覚醒した、かな。
(つづく)