はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と七十四
「ノーウーマンノークライ ナ バリアイランド!」②
あたかも、私イチオシの(正確には「能」「能楽」の次だから、ニオシ、の)文楽の、人形浄瑠璃の、そのオープニングで、黒衣(クロゴ)が「とざいと~ざい~」と向上をのべるがごとくの、そんなプロローグ噺を終えたAくん、いよいよ、本腰を入れて、今宵の目玉演目『懐かしのバリアイランド物語』に突入する。
ある日。
ある日、たまたま知り合った地元のお兄さんとお姉さんと、で、やたらカタカタと音がするボロボロのレンタ・ジープ・カーをかっ飛ばして、そのお兄さんオススメのスポットに向かう。
よほどそのカタカタが気に入ったのだろう。そのお兄さん、到着するまでずっと、そのカタカタとジョイントライブ。妙なリズムで鼻歌を、フンカタフンカタフンカタフンと歌い続ける。けっして上手くはない。
で、ようやく到着。
おっ、湖。
いくらかお金を払って、気の良さそうなオヤジさんの小舟で向こう岸へ。
やっぱり、なんとなく怪しい。聞けば、墓地だと言う。
ぼ、墓地か~。
どうしてこんなトコロがオススメのスポットなんだよ、などと、心の中でブツブツ言いつつ、奥へ奥へと進んでいく。
わっ。
木の枝のようなもので簡単につくられた小さな三角屋根のその隙間から、眠るように横たわっているお婆さんがチラリと見える。聞けば、数日前にドコからか落っこちて亡くなったのだと言う。
興味津々ではあったものの、怪しさに恐ろしさまで加わって、ナニやら気持ちがズンと重く沈む。
はたしてココは、僕のような者が訪れていいトコロなのだろうか。
そんな思いと、お姉さんが、どうしても断れなかった用事がある、ということと、で、早々に引き上げることになる。
そのあと、ある村で、その二人とは別れたのだけれど、突然、その時、そのお姉さんが泣き出してしまったので驚いてしまう。アレコレ推測したりはしてみたが、結局、あの時のあの、乙女の涙の真相は、わからないままだ。(つづく)