はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と四十九
「コウコクトウ・・・」②
先ほどから、ナゼ、ココに、コンなモノが、と、訝(イブカ)しんでいた、サクランボ、に、ついに手を伸ばす。口に含む。プチっと果汁が弾ける。もちろん、普通に美味しい。そして、ナニ気に例の芋焼酎で、そのあとを追い掛ける。
うわっ。
合う、合いすぎる。
あたかも埼玉の焼酎かのようなネーミングの、ちょっとヤヤこしい宮崎の芋焼酎なのだけれど、この山形のサクランボとの相性は格別だ。甘い土の臭いに爽やかな柑橘系の風が吹き抜けたような、そんな感じ、なのだ。おそらく、わかってはもらえないだろうけれど。
もう一つ。
そして、もう一グビリ。
やっぱり合う、合いすぎる。
そんな抜群のマリアージュに酔いしれているうちに、この芋焼酎の広告塔ならなってもいいな、などと、上から目線でエラそうに思ったりしていると、Aくん、突然、扉の向こう側の沈黙の世界から帰還する。
「共感、共感だろうな」
共感?
「タレントが仕事として、なら、共感なんてできなくたって致し方なしに、ということもあるかもしれないけれど、仕事ではなく自分の思いで、ということであれば、やはり共感しかないと思う。だから、自分にできるコトをしたくなる、してあげたくなる。そうでなければ、そんな、リスクがあるかもしれないコトに首を突っ込まないだろ、普通」
共感、か~。
「だけど、ウインウインの損得勘定みたいなもので、たとえば政治家が、広告塔に、なんてことになってくると、ソレはちょっとヤヤこしいコトになるかもな」
ウインウインの、損得勘定?、政治家?
「たいていは、まず、『金(カネ)』だな。政治家ならソコに、『票』まで絡んでくるね、間違いなく」
金と票、か~。
「当人が思っているほど、そうした共感は、必ずしも正義の共感とは限らないわけだ」
正義の共感とは、限らない?
「だから、だからこそ、大企業、のみならず、文化、教育、宗教、といったモノと政治との距離は、そんな簡単に、軽率に、ソレらの広告塔となって縮めていい、ってもんじゃない、ということだ」
縮めていいってもんじゃない、か~。なるほど、なるほどな。
腑にも落ちつつ、納得もしつつ、もう一つ、サクランボ。
そして、もう一グビリ、芋焼酎。
(つづく)