ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.08

先付 その六

「ソノバシノギヲケズラー」

 鎬(シノギ)を削ることは素晴らしいことだが、「その場シノギ」はいくら削っても、もともと薄っぺらいので、削ることによる次への突破口の一手が、一向に見えてこない。そんな、削り甲斐の無さをウリにしているのが、「ソノバシノギヲケズラー」である、らしい。

 しかし、Aくんによれば、この「ソノバシノギヲケズラー」、シッカリと増殖傾向にある、という。

 短期間にナンらかの結果を出すことを、余儀なくされた「ホシンヒューマクン」たちの、悲しき宿命みたいなモノが、その増殖傾向に一役買っている、とも、言い添えていた。

 と、いうことは、あの『巨人の星』、星飛雄馬の大リーグボールは、球質が軽いという致命的な欠点を背負った若者が、プロ球界で生き抜くために、その場シノギを削りに削った究極のボールであった、と、言えなくもない。

 Aくんは、そんなその場シノギ道に邁進してしまった星飛雄馬に、あまり好意的ではなかったが、私は、その場シノギもソコまで削りきれば、たとえソレが邪道であったとしても、拍手を送るに値するのではないか、と、コッソリ思っている。

 Aくんに、またまた説教されてしまいそうだけれど。

(つづく)