ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1203

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と三十四

「ナニサマ?」

 「圧倒的弱者が、圧倒的強者に対して、好き嫌いとか敵味方とか損得とかとは関係なく、ただ、「いくらなんでも、もう、黙っているわけにはいかない」という思いから、やっと声を上げることができた、にもかかわらず、そんな圧倒的弱者に向けて、好き嫌いやら敵味方やら損得やらの呪縛から解き放たれないピーポーたちが、妙に、ヤタラと使いたがるフレーズ、ってのがあるわけよ」、とAくん。

 呪縛から解き放たれないピーポーたちが、ヤタラと使いたがる、フレーズ、とは、いったい。

 そのフレーズ、私なりに秒速で、アレコレ思い起こしてみようと試みる。とくに匿名性三昧のネットの世界では、そうしたアレコレ、溢れ返っている。と、思ってはいたものの、あらためてどんなモノが、と、思い起こそうとしても、そう簡単には思い起こせない。 

 「ソレが」

 グッと身を乗り出す。

 「ナニサマ?」

 なにさま?。あ、あ~。

 「なにさまのつもり、の、なにさま。問答無用の殺し文句ですよね」

 「殺し文句?。ん~、ちょっと違うような気もするが。その思いを、魂を、もぎ取ってしまう、という意味では、まんざら的(マト)外れでもないか」

 「勇気を振り絞って声にしたその熱き思いを、『あなたのその立場でエラそうに言うんじゃないよ』と、力付くで、乱暴に、根こそぎ引き抜いてしまおうとするのですから、やっぱり、殺し文句だと思います」

 「あっ」

 ん?

 「そういえば、ある知人がある権力者の悪行に苦言を呈しまくっていると」

 んん?

 「その場にいた者から『ナニサマ?』、と」

 「揶揄された、わけですね。で、その方はどうされたのですか」

 「間髪入れずに言い返したらしいよ」

 おっ。

 「『国民サマだ』、ってね」

 お~、国民さま、か~。

 「いいですね、その、国民さま」

 「国民サマが強者たちの悪行にモノ申してナニが悪い、と、いうわけだ」

 なるほど、なるほどな。

 職業も、性別も、年齢も、その他モロモロも、一切関係なくどんな立場であろうとも、全ての国民さまが、権力者の、強者の、悪行にモノ申せる国こそが健全な国なのだと、心底、思う。(つづく)