はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と十八
「ヒンイ! ヒンイ?」
「先生でもナンでもないのに、ナゼか先生と呼ばれておられる国会議員の先生方が、国会やら委員会で、妙に怒りを露(アラ)わにされる時のパターンが、大きく二つ、あるような気がするんだよね」
ん?
「一つは、相手側の先生が、人として、政治のプロとして、けっして許されないようなトンでもない発言をしている、時。ま、コレは、怒りの王道。わかりやすいし、納得もしやすい」
あ~、たしかに、納得できる。
「もう一つは、実は当の本人も『マズいな』と思っているダークな急所、いわゆる痛いトコロにズバッと斬り込んでこられた、時。コレは、怒りの邪道。筋違いの怒りではあるのだけれど、怒ることで相手のその後の攻撃を封じ込んでしまおう、という作戦だな」
あ~、たしかに、目一杯、邪道の臭いがする。
「つまり、国会議員の先生方の怒りには、誰でもが納得できる『王道』と、自己防衛本能丸出しのダークな『邪道』とがある、ということですね」
「そう、そういうことだ。しかも、その邪道が、このところ、結構、目立ってきたりしているわけよ」
ソレ、なんとなく、わかる気がする。
「たとえば、あの先生方が、ヤタラと『品位が、品位が』などと宣い出す時って、ホント、怪しいですよね」
「そうそうそうそう、怪しい怪しい。そもそも、アレだけ真実を隠蔽しまくっても、しらばっくれても、ウソをつき倒しても、そして、人権無視の発言を繰り返しても、結局、ほとんどスル~だろ。にもかかわらず、その指摘そのものは、すこぶる真っ当で、核心を突いている正論なのだけれど、その表現の仕方がマズいというだけで、『国会の品位を汚した~』などとギャ~ギャ~と怒りまくる、場合によっては『懲罰動議』なんてことまでやらかしてしまう、という、おエライ先生方の品位の履き違え。ちょいと脳ミソが沸いてしまってるんじゃないか、って、普通、思うよな」
思う。悲しくなってくるほど、思う。スル~すべきでないモノとスル~すべきモノとが、完全にひっくり返ってしまっている。
「品位の履き違え。というか、おそらく、あの先生方が考える『品位』とは、その中身ではなく、上っ面(ツラ)だけを指しているのだと思います」
「なるほどな。丁寧な悪行は許されても、乱暴な善行は許されない、ということか」
「そういうことです」
「澄ました顔をして、品良く丁寧に丁寧に、悪行を積み上げていくわけだ、あの先生方は」
(つづく)