はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と三十三
「メンゼイ ヒキダシ~」
「チャチャチャチャッチャチャ~!」
へ?
「ドコでも免税引き出し~」
ド、ドラえもん?
「この引き出しに、お金を入れておけば免税になるんだよ」
はい?
「持ち運びに便利なコンパクトサイズなので、事務所でもおウチでも、ドコでも、重宝する~」
だから、ドコでも、免税引き出し~、な、わけか。
「あとは、裏金であろうが還付金であろうが、ナンでもカンでも、ソコに放り込んでおけば、免税~」
課税の対象にならない、か~。
有り難いと言えば有り難いけれど、間違いなく、地方も、国も、立ち行かなくなるだろうな。
ん!?
ま、まさか。
「まさか、もう、すでに、あの人たちは、その引き出しを」
「もちろん。そういうコトに関しては、あの人たちのアンテナの精度、バツグンだから~」
「でしょうね。ドラえもんも、提供する相手はチャンと精査しないと」
「ごめんなさい、のび太くん」
「ホントに困っているピーポーたちにならいいけど、余裕まみれのあの人たちに、そんなモノ渡してしまったら、ますます調子に乗って、さらにトンでもないコトをしでかすから、きっと」
などと、二人して、バカみたいに盛り上がる。
だけど、冗談抜きで、あの人たちは、本気で「免税引き出し~」だったのだろう。議員会館で、高級料亭で、派閥の会合で、お仲間内で、ほくそ笑みながらコソコソと、声を掛け合っていたに違いない。
「ドコでも免税引き出し~」
(つづく)