はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と五十
「マイニチ ミル・・・」
「あるテレビ番組で、新たなる野菜の品種に取り組んでこられた老練なオヤジさんが、ナンらかの厄介なトラブルに直面した際の心得について、語っておられたわけよ」、とAくん。
ん?、トラブルに直面した際の、心得?
思わず、グッと身を乗り出す。
「ナゼ、その野菜がソンなコトになってしまうのか。アレコレ調べてみても、考えてみても、どうしても、その原因がわからない」
さらに、ググッと身を乗り出す。
「そんなオヤジさんが、その結論として口にしたトドメの言葉とは、いったい、ナンだったと思う?」
えっ。
Aくん得意の唐突さで、コチラにフラれたものだから、面喰らう。
「私なら・・・、私なら、困った時の神頼み、ならぬ、第三者頼み。その道の専門家に教えを乞います」
とっさに思い付いたコトを、そのまま宣わせてもらう。
「なるほど、ソレも一つの解決策、とは思う。けれど、その時、彼が口にしたのは」
んんん?
Aくんの顔が、グググッと目の真ん前にくるほどまでに、ググググッと身を乗り出してしまう。
「毎日、見る」
おっ。
「毎日、見る、ですか」
「そう、来る日も来る日も、とにかく、毎日、毎日、見る。すると必ず見えてくるモノがある、と、そのオヤジさんは宣うわけよ」
「で、結局、彼は、その原因を突き止めることができたのですか」
「もちろん。もう、スッカリ、人気の野菜になっている、らしい」
「学校あたりでも、致し方なくリモートで、ということになりかねない今日この頃なだけに、その言葉、響きますね」
「そうなんだよな~、ビビッと響くわけよ、この、毎日見る。子どもたちを、リアルに毎日見ることで、見続けることで、やっと見えてくる大事なモノがある、という、この言葉がね」
なるほど、やっと見えてくる、大事なモノ、か~。
響きもすれば沁みもする、いい言葉だ。
「ソンなことはナイとは思うけれど、子どもたちを見ることもせず、万が一にもボンヤリと授業を、などということをしているとしたら、『ボ~ッと生きてんじゃね~よ』と、オカッパ頭の女の子に叱られてしまうかもしれんな~」
オカッパ頭の女の子?。の、その意味は、全くもって不明だが、ボ~ッと学校の先生をしていては、そう簡単には、子どもたちの内なるモノは見えてこない、ということなのだろうな、きっと。(つづく)