ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.850

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と八十一

「イノチガ ミエナイ!」

 「命に、敵味方のレッテルやらラベルやらを貼って、あるいは、天と地ほどの格差をつけて、おそらく、ソコに、ソコにある、命が、全く見えなくなってしまっている、というコトなのだろう」、とAくん。その瞳は、憤りにまみれつつ、絶望的に曇っている。 

 ソコにある命が見えなくなってしまっている?

 「一つ一つの命に、生活があり、人生があり、幸せがあり、夢があり、未来があるのだ。にもかかわらず、ソコにあるそうした命が、全く見えない。となると、コレほどの悲劇はないよな」

 未来ある一つ一つの命が見えなくなってしまった悲劇?

 「見えないコトが引き起こす悲劇、悪魔の所業、ソレこそが、戦争、戦争というモノの正体だな」

 戦争というモノの正体?

 「有識者の中には、戦争は殺人ではない。などと宣う者までいたりする」

 戦争が、殺人ではない!?

 「殺人などと思ってしまったら、大抵は、己の心がもたなくなってしまう。ということなんだろう」

 なるほど。

 心が病んでしまった兵士の話を耳にしたことはある。人の命を奪って、平常心でおれる人間など、そもそもいないはずだ。

 「戦争なんてものは、ソコには命がない。と、思う。思い込む。ことで、成り立っているのかもな」

 ソコには命がない。

 ないモノは見えない。

 だから、命が、見えない。か~。

 ん~・・・、ナンという手前勝手なモノの見方、考え方なのだろう。

 「しかし、しかしだ、紛れもなくソコに命はある。あって、あって、ありまくる。だから、だからこそ、遠く離れた安全地帯から、涼しい顔をして命令だけを出していればいい権力者たちに、あるいは、遠く離れているために、更に一層、そうした命が見えない権力者たちに、あえて、あえて、言いたい、言っておきたい。弱き者たちの、弱き者たちの命を、い、の、ち、を、ナメんなよな、とね」

(つづく)