はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と八十一
「イノチガ ミエナイ!」
「命に、敵味方のレッテルやらラベルやらを貼って、あるいは、天と地ほどの格差をつけて、おそらく、ソコに、ソコにある、命が、全く見えなくなってしまっている、というコトなのだろう」、とAくん。その瞳は、憤りにまみれつつ、絶望的に曇っている。
ソコにある命が見えなくなってしまっている?
「一つ一つの命に、生活があり、人生があり、幸せがあり、夢があり、未来があるのだ。にもかかわらず、ソコにあるそうした命が、全く見えない。となると、コレほどの悲劇はないよな」
未来ある一つ一つの命が見えなくなってしまった悲劇?
「見えないコトが引き起こす悲劇、悪魔の所業、ソレこそが、戦争、戦争というモノの正体だな」
戦争というモノの正体?
「有識者の中には、戦争は殺人ではない。などと宣う者までいたりする」
戦争が、殺人ではない!?
「殺人などと思ってしまったら、大抵は、己の心がもたなくなってしまう。ということなんだろう」
なるほど。
心が病んでしまった兵士の話を耳にしたことはある。人の命を奪って、平常心でおれる人間など、そもそもいないはずだ。
「戦争なんてものは、ソコには命がない。と、思う。思い込む。ことで、成り立っているのかもな」
ソコには命がない。
ないモノは見えない。
だから、命が、見えない。か~。
ん~・・・、ナンという手前勝手なモノの見方、考え方なのだろう。
「しかし、しかしだ、紛れもなくソコに命はある。あって、あって、ありまくる。だから、だからこそ、遠く離れた安全地帯から、涼しい顔をして命令だけを出していればいい権力者たちに、あるいは、遠く離れているために、更に一層、そうした命が見えない権力者たちに、あえて、あえて、言いたい、言っておきたい。弱き者たちの、弱き者たちの命を、い、の、ち、を、ナメんなよな、とね」
(つづく)