はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と六十九
「トクベツナ オ!」②
「つまり、オ、は、特別なんです。ということなんだろう」
特別なんです、とは。
「だから、特別な、オ、を、特別ではないものには付けられない」
特別ではないもの、とは。
ますますナゾがナゾ呼ぶナゾナゾワールドに突入だ。
「それゆえに、パラリンピックにもデフリンピックにも、オ、が、ない」
あっ、あ~。
オ、が、ない。
ナゾがナゾ呼ぶナゾナゾワールドの出口が、一気に見えた気がする。
「パラオリンピック、デフオリンピック、ではない、ということですね」
「そう、そういうこと。他の競技会とは違う特別なモノであるのなら、尚のこと、全て丸ごとひっくるめてオリンピックだろ、と、普通、考えるはずなのに、特別なモノのその特別が、多様性とか共生とかといった理想を謳ったモノなのではなくて、いかにも権威主義的な、単なるヒエラルキーの頂点ということに過ぎない、となると、どうしても、高まろうとする気持ちも、盛り上がろうとする気持ちも、萎(ナ)えてしまう」
なるほど、権威の象徴として、ソコに「オ」がある、ということか。
そういえば、たしか、最初は、パラプレジア(Paraplegia )の「パラ」であったものが、その後、いつのまにか、パラレル(Parallel )の「パラ」に移行した、みたいなことが、どこかに書かれていたように記憶する。この移行、ひょっとしたら、「パラ」繋がりというだけの安易な移行ではないのか、と、どうしても、勘繰ってしまう。
永遠に交わらない「平行」という意味をもつ、この「パラレル」である限り、「オリンピックが特別なモノであるからこそ、ソコに、オ、は、付けられないんだよ」という、そんなシモジモじゃないエライ人たちの凝り固まった考え、を、変えることなどできるわけがない、か。(つづく)