はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と七十
「クロシロヲ ツケル」①
アレやコレやと分断三昧の様相を呈しつつあるこの社会であるけれど、そんな数多ある分断の中で、「黒白をつける、黒白をつけたくない」の分断もまた、なかなか厄介な分断だと言っていい、とAくん。
その典型的な例が、あの、見事なまでの公文書の黒塗り、なのかもしれない、と、補足する。
黒白、白黒?、クロシロ、コクビャク?
「とにかく、その、黒白を、つけたくないんだという強い思いからの、え~い、全部黒く塗っちゃえ~、って、ことですか」
「少しでも黒白をハッキリつけたいという思いがあるのなら、アレほどまでの姑息な黒塗りはしないだろ」
そりゃそうだ、たしかに、おっしゃる通り。あんな黒塗りなどするわけがない。
「とにかくだ、ナニよりも問題なのは、ソレを良しとする、もしくは、ソレもまた致し方なしとする、という、そんな人たちが数多くいる、ということ」
なるほど、黒白をつける派、と、黒白をつけたがらない派、との、分断だということか。
「でも、なぜ、黒白をつけたがらないのですか」
私の常識から大きく逸脱するその感覚が、どうしても解せないものだから、おもわず尋ねてみる。
「ま、当人たちは、ナニかマズいと思うところがあるからこそ黒塗りをするのだろうけれど、なぜ、当人たち以外のピーポーたちまでもが、黒白なんてつけなくていい、と思うのか、は、たしかに、かなり謎めいているよな」
(つづく)