ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.282

はしご酒(4軒目) その三十三

 「ヘイワ ハ ゲンソウ?」

 「平和って、幻想かな」、とAくん。まさに畳み掛けるが如くの唐突感、こういうのを「唐突感そうそう」と言うのかもしれないな、と一瞬思ったけれど、きっと、そんなことは、言わないと思う。

 ふと、この星で政治を司るシモジモじゃないとってもエライある人の、実に生真面目なある言葉が、頭をよぎる。

 呑気に、無責任に、平和平和と唱えるだけでは、平和は勝ち取れない。

 こんな感じの言葉であったと記憶する。

 そしてその、生真面目なエライ人は、胸を張って武器を買う。

 多かれ少なかれ、ほとんどの権力者は、このエライ人と同様の考えであるのではないか、と私は思っている。そうでなければ、この星に、これだけの数の武器が存在するわけがない。そして、どれだけの命が、生活が、文化が、失われていったか、ちょっと振り返ってみただけでも恐ろしくなるし、腹も立つし、虚しくもなる。

 そもそも、平和平和と唱えることが、なぜ呑気なのか、そして、武器を買って平和を勝ち取ろうとすることが、なぜ無責任ではないのか、私にはわからない。

 そんなこんななことをあれこれ考えているうちに、Aくんの口からポロリとこぼれ落ちた「平和って、幻想かな」というその言葉に、悔しいけれど、情けないけれど、そうかもしれないな、と、おもわず思ってしまいそうになる。(つづく)