ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.470

 はしご酒(4軒目) その百と百と十一

 「キキカン ノ キョウユウ ト ノレンニウデオシ」②

 たとえば、温暖化。

 まず、私は、そう遠くはない未来に、この星の海は、さらに広大に、さらに熱く、なると思っている。熱くなった海が、大気まで熱し、そのことによって、毎年毎年パワーアップした台風が、想像を遥かに越える大雨が、やって来ては、甚大な被害をもたらす。軽く40℃オーバーの日々が続き、聞いたことのないような虫が、細菌が、ウイルスが、疾病が、巷を賑わす。紫外線による皮膚癌も、年々増える。

 あまり考えることもなく、ザッとあげてみただけでも、未来は、鳥肌モノのアレやコレやの危惧やら危機感やらでメジロ押しだ。

 それでも、そうした危惧は、危機感は、なぜか、共有されるどころか、申し訳なさそうに、遠慮しながら地中深くに潜っていく。

 なぜなんだろう。

 そんな、とてつもなく危なっかしい未来を前にして、この国は、この星は、恐ろしくなるほど呑気で、そして、謎めいている。そんな、ナゾがナゾ呼ぶナゾナゾワールドの迷宮を彷徨(サマヨ)い始めていると、Aくん、ようやくその沈黙を、ユルリと破る。

 「大人の事情まみれのこの国で、この星で、置かれている立場も、モノの見方も価値観も、人それぞれ違うのに、危機感を共有することなど、夢のまた夢、できないことのほうが、当たり前、であるようなそんな気が、ドンドンとしてくるよな~」

 悲しいかなAくんも、お手上げ状態のようである。

 「でもね、共有されていることも、もちろん、ないわけじゃない」

 おっ、ポジティブな転調を試みるAくんに、期待が、ブワンと膨らむ。

 「原発の場合でもそうであったように、いくら、その道のプロが警鐘を鳴らしたとしても、高性能の耳栓でも装着しているのでは、と、勘繰ってしまうほどの、この、暖簾(ノレン)に腕押し感。コレだけは、皮肉にも、結構な数の人々の間で、シッカリと、共有されている」

 うわっ、そっちの共有か~。

 不覚にも膨らませてしまった私の期待は、見事なまでに、電光石火の勢いで、ブシュ~ッと気の抜けた音を立てながら、一気に萎む。(つづく)

 

 

 

 

 

 

追記

 コメントいろいろ、ありがたく、楽しく、読ませて頂いております。

 オッ、オオッ、オオオッ、と、響いた話題に遭遇した際には、成り代わって「Aくん」と「私」に、酒のチカラも借りながら、タラタラと、ア~でもないコ~でもない、と、語り合ってもらうことに、いたします。