ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.442

はしご酒(4軒目) その百と八十三

スズキコージ ノ ススメ」

 スズキコージを、ご存知か、とAくん。

 Aくん得意の、いつもの唐突さで、そう尋ねられた私は、すかさず、この頭の中の、随分と旧式で、そのうえ、かなりの中古、の、コンピューターを、今一度(イマヒトタビ)、フル稼働させながら、その「スズキコージ」を検索してみる。

 漫才師?、俳優?、スズキの新型バイク?、残念ながら、ドレもコレも全くもってヒットしない。そもそも、ヒットすることのほうが珍しいのだけれど。

 「大好きなアーティスト。本人自身がアートみたいな人なんだけれど、でもやっぱり絵本がいい」、と、実に嬉しそうに語るAくん。

 「おススメの一冊、みたいなもの、ありますか」

 「そうだな~、・・・、いろいろあるけれど、この一冊、となると、モジモジモジ~、ジモジモジモ~、ズナカズナカ~、カナズカナズ~、の、サルビルサ、かな」

 「モジモジ?、ズナカ?、の、サルビルサ、ですか」

 本人自身がアートみたいな、と、Aくんが賞賛するだけに、その絵本のタイトル(?)からして、充分にアートアートしている。

 「とくに意味はないと思うんだけれど、回文みたいになっているところがミソで、この星の、巨大な権力の愚かさみたいなものを、見事なまでに風刺しているんだな」

 「なんとなく難しそうですね」

 少し、嫌なものを感じる。大人の理屈で描かれた、頭デッカチの絵本のような、そんな気がしなくもない。

 「ぜんぜん、大丈夫。僕が勝手に、そんなことを偉そうに宣っているだけで、カラフルで、リズミカルで、パワフルで、コミカル。ま、機会があったら一度、手にとって見てみてよ。手元に置いておきたくなる、ホントにチャーミングな絵本なんだから」

 Aくんおススメの、スズキコージのサルビルサ。俄然、興味が湧いてくる。(つづく)