ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.431

はしご酒(4軒目) その百と七十二

「ムネン!」②

 無念。

 重量級の、悔しさ、虚しさ、悲しさ、などが、グチャッと混ざって固まった塊(カタマリ)が、ズシリとのしかかる、その苦しみは、ボヤくぐらいでは、キレるぐらいでは、到底、晴れることなどないだろう。

 そんな無念に、どう向き合えばいいのか、すっかり袋小路に入り込んでしまった私は、Aくんに負けないぐらいの唐突さで、問うてみる。

 「晴らすことなど、到底、できそうにない、そんな無念に、どう向き合うことができると思いますか」

 女将さんに、「海月(クラゲ)の酢の物、ちょこっと、食べはりますか」と、なぜか、なんとなくいい感じの関西風の口調で勧められていたAくんは、なんとなく気持ちの悪い品(シナ)をつくりつつ、「食べはりますどすえ」などと、実に嬉しそうに、なぜか、妙な京言葉で返している。

 妙ではあるものの、それなりにいいムードであっただけに、私の問いかけが、おそらく、聞こえなかったのだろう、と、もう一度、問いかけ直してみよう、と思った、まさにそのとき、なんとも絶妙なタイミングで、Aくんの「ムネン!」論の幕が、静かに上がる。(つづく)