ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.364

はしご酒(4軒目) その百と十五

「ヒニチジョウ ノ ススメ」①

 非日常に身を置くことの必要性を、Aくんは、ことさら訴える。それほど、日常のみに身を置くことには危険性が伴う、ということなのだろうか。

 「日常が、目一杯、悪役みたいになっていますが、ソコまで日常は、危険に満ち溢れているのですか」、と、心して尋ねてみる。

 「疲れない?」、とAくん。

 「そこそこ疲れてはいますけど」、と私。

 「たいてい、疲れるよな~。ソレが日常だと思う」、とAくん。

 閉ざされた日常の中で疲れた自分を、ほんの少し、ソコから解放してくれるもの、ソレが非日常、ということなのかもしれない。

 「そんなものに意味などない、現実逃避、時間の無駄、根本的な解決にはならない、などなど、いろいろ意見はあるにはあるけれど、それでもやっぱり、僕は、非日常をおススメする」

 なんとなく、アレコレと思いを巡らす。

 街なかの呉服屋さんで、コレ、どうかしら、ソレ、似合うかな、などと話に花が咲く、そうして手に入れたお気に入りのキモノで歌舞伎鑑賞、あるいは、自転車でひとり旅、はたまた、大自然の中でヨガ、おまけに、昔の仲間と親父バンド・・・、考えてみると、こうして居酒屋で、ウダウダと酒を呑み交わすのもまた、非日常のように思えなくもない。

 またまた、なるほど、と、妙に納得してしまう私なのである。(つづく)