はしご酒(4軒目) その百と七十八
「ヨウカイ ヒトリガッチガチ コウリン」①
神さまは、等しく皆に試練を与えるからこそ神さまなのだ、と、Aくん。
突然、神父さま?、牧師さま?、な、Aくんであるが、それはそれとして、その「等しく皆に」の部分を、どうしても、スッと聞き流せない私がいる。
「等しく皆に、が、神さまなら、もう神さまなんていないのではないか、それが言い過ぎであるなら、どこか遠いところで、お休みされているのではないか、とさえ思ってしまうほど、この世は、等しく皆に、ではないようなことばかりじゃないですか」、と、思い切って異議を唱えてみる。
「おっしゃる通り。トンでもないことが起こったときでさえ、皆が苦しみ喘(アエ)いでいるときでさえ、ドサクサに紛れてボロ儲け、なんてことも、この世の中では、それほど珍しいことじゃない」、と、私が唱えた異議に、アッサリと屈服したかのようなAくん。
肩透かしにもほどがある、と、思いはしたけれど、Aくんのことだから、きっと、その背後に、ナニやら深いものが隠されているのだろうと、その続きに期待する。
にもかかわらず、そのままAくんは、例の海月の酢の物をアテにチビチビとやり始めてしまう。
やむにやまれず私は、「それでも神さまは、等しく皆に、ではないのですか」、と、本当は神さまに頑張ってもらいたいんだ、という私の思いを、前面に押し出すように、食い下がる。(つづく)