ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.436

はしご酒(4軒目) その百と七十七

「アドベンチャー ノ ススメ」③

 なぜか焦りぎみにその石を、ギュギュッとリュックサックに詰め込んだ私は、足早にその工事現場をあとにする。

 ソコから少し離れた人気(ヒトケ)のない空き地で、ワクワクしながら、その石とトンカチをリュックサックから取り出すと、慎重に、丁寧に、カンカンカンカンカンと割り始める。

 すると、その割れ目に、ポツポツポツポツとへばりつく金色に光り輝く小さな鉱物たち。

 とっさに私は、周囲を見回す。

 私のワクワクは、一気に、バクバク。

 金(キン)だな、間違いない、絶対、金、金、金。

 コレって泥棒?

 いや、大丈夫。

 しばらくは、誰にも言わないでおこう。

 内緒にして、宝箱に隠しておこう。

 これで、大金持ち。

 もう勉強なんてするもんか。

 純粋無垢な採掘少年は、ドンドンと邪念にまみれていく。

 しかしながら、幸か不幸か、その金は、二束三文の黄鉄鉱という人騒がせな鉱物であったのである。邪念まみれの採掘少年が、大きな落胆とともに、その悲劇の真実を知るのに、それほどの時間を必要としなかった、ことは、とりあえず付け加えておきたい。

 でも、たしかに邪念にまみれはしたけれど、あの頃、採掘少年は、真剣に、アレやコレやと興味をもって、探しに行ったり、カンカンやったり、図鑑で調べたり、ものしりの近所のお兄さんに尋ねてみたり、と、それはそれで、本当に、楽しくて楽しくてしかたがなかったのだ。

 あり得ないことなのかもしれない。かもしれないが、学校で習う、ありとあらゆる勉強というものを、子どもたちが、そんな感じで、ワクワク、バクバク、しながら、取り組むことができるとしたら、誰しもがきっと、「勉強大好き少年少女」になるに違いない、と、私には、思えてならないのである。(つづく)