ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.133

はしご酒(2軒目) その三十五

「コダワル!」

 全くの偶然なのだけれど、Aくんも、Oくんも、Zさんも、そして、この私も、(多少の強弱はあるものの)なかなかの「時代劇愛」なのである。

 そう、時代劇、愛。

 しかしながら、その時代劇、制作費が高くつくからなのか、それとも、視聴率を稼げなくなってしまったからなのか、悲しいかな、民放あたりでは、再放送以外、あまり見かけなくなったような気がする。

 こんなことでは、終(シマ)いには、絶滅危惧種の仲間入り、などということにもなりかねない。

 そんな、危惧やら懸念やらを振り払いつつ、時代劇が光輝いていたあの頃を振り返ってみる。

 鞍馬天狗丹下左膳、隠密剣士、眠狂四朗、座頭市、必殺仕事人、などなど、と、凄まじいばかりのラインナップである。しかも、あの頃の上質の時代劇ヒーローたちのカッコよさには、SF系ヒーローたちとは少し異なる「コダワリ」が、そこかしこで垣間見られたりしたものだから、なおさらのこと、興味深いのである。

 そう、コダワリ。

 たとえば「タテ(殺陣)」。見事なまでの剣さばきが、単なる「殺人」を異次元の「殺陣」ワールドまで押し上げ、見る者を魅了する。

 さらに「ワル(悪)」。陰で操る、不気味で怪しいシモジモじゃない悪党あってこその時代劇であり、時代劇ヒーロー。ヒーローだけではどうしようもないのである。そんな悪党が、毎回、必ず登場するものだから、ワクワク感が止まらない。

 そして、そうした悪党たちがひしめく「ワル」界での知名度No.1と言えば、やはり、「越後屋」であろう。「越後屋、お主も悪よの~、むはっ、むはっ、むはっ、むはっはっはっは~」、と、笑い声まで丸ごとワルまみれなのである。

 私が、そんなこんなの「コダワリこそが時代劇のキモ」論を展開しているうちに、以前、Aくんが、「時代劇も授業も、コダワリがキモ!」、と力説していたことを、思い出す。

 そう、時代劇も授業も、コダワリ、が、キモ!

 自分以外にとっては、ほぼ、どうでもいいようなコト、おそらく、自分以外は誰も、気付くことさえないかもしれないようなそんなトコロに、どうしてもコダワってしまう、コダワらずにはおれない、いや、むしろ、ソコは、ナニがナンでもコダワってやるぜ、ぐらいでなければ、ダメだ。と、あいかわらず、その時もまた、Aくんは、メチャクチャ熱かったのである。

 まさにその時、不覚にも、おもわず、つい調子に乗りすぎて、私の口から飛び出た、その(またまたZさんに脳の前頭葉の老化と言われてしまいそうな)迷セリフまでも、思い出さなくていいのに、ついでに、思い出してしまった。

 「お主も、コダ、ワル、よの~」

 あらためて、今一度、心の中で呟いてみる。

 お主も、コダ、ワル、よの~。

 んん?

 後悔しなければならないほどワルくはないな、と、(お兄さんオススメの暴れん坊酒のおかげさまなのかもしれないけれど)思えてしまう、かなり強気な、今宵の私なのである。(つづく)