ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1185

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と十六

「セイカツホゴ トイウノハ ニホンブンカ カラスレバ ハジデス」

 「生活保護というのは、日本文化からすれば恥です。人様の税金で生活しようとするのですから」

 えっ!?

 「日本文化からすれば、税金で生計を立てるのは、恥、らしい」

 ん、ん~。

 「この政治家が考える生活保護とは。日本文化とは。恥とは。人様の税金とは。生活とは。いったい、ナンなのか。ソコのところがサッパリわからないわけ」

 なんと、政治家の言葉、だったとは。

 「その政治家が考える生活保護とか、日本文化とか、恥とか、人様の税金とか、生活とか、が、少なくとも私たちが考えるモノとは根本的に違うのでしょうね」

 「違うんだろうな~」

 「能楽文楽、歌舞伎、などなどのこの国の伝統文化をこよなく愛す私であるだけに、あえて、あえて言わせていただきますが」

 「おっ」

 「仮に、万が一にも、生活保護を恥とするのが日本文化なら、そんな文化、もう、なくなったっていいのではないですか」

 「お~、君にしては珍しく過激だね~」

 「そんな政治家ごときに日本文化を語られると、無性に腹が立つのです」

 「ま~ま~ま~ま~、おさえて、おさえて」

 Aくんにそう窘(タシナ)められ、慌てて、深呼吸を試みる。たしかにカッカし過ぎてしまったようだ。

 「あの政治家が考える日本文化は日本文化でもナンでもなく、弱肉強食が全ての基本であった、太古の、未熟で野蛮なあの頃を、懐かしんでいるだけなのだろう。『勝つか負けるか。喰うか喰われるか。敗者も弱者もクソ喰らえ、の、実に素晴らしい時代だったよな~』ってね」

 な、な、なんと。

 大慌ての深呼吸で収まりかけていた怒りが、またまた、ぶり返してくる。

 「普通にモノゴトを考えられる人間なら、誰だってサクッと理解できるコトだと思うが、生活保護が問題なのではない。マジでドウしようもないぐらいタイヘンな状況に陥ってしまったピーポーたちのためにある生活保護を、不正受給しようとするコトが、ヤツが、問題なんだ」

 その通りだ。

 生活保護が恥なのではない。恥なのは「不正」。ソコに不正がないのであれば、恥じる必要など微塵もない。そもそも、たしか、不正受給は0.30%程度だったかと。あたかも、生活保護全体が不正まみれのようなネガティブ・キャンペーンこそが「不正」であり「恥」なのだ。

 「ついでに言っておくが、人様の税金で生活することが問題なのではない。人様の税金で生活している公務員が、国会議員が、人様のために働くことに背を向けて、己のために不正に手を染めるコトが問題であり『恥』なわけ」

 ふ~。

 次から次へと後を絶たない、不正に手を染める議員たち。お仲間の、そんなダークな議員たちのコトは棚に上げて、しれっと「生活保護というのは、日本文化からすれば恥です。人様の税金で生活しようとするのですから」などと宣えてしまうそのツラの皮の分厚さに、あらためて敬意を表したい。もちろん、誉め言葉ではない。(つづく)