ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.991

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と二十二

「ブンカ ト ケンリョク ト」

 まず最初に謝らなければならない、と、とびっきり唐突にAくん。おそらく、そのままでは捨て置けない、そんな、好ましくないナニかを思い出したのだろう。

 「僕はね、ヤヤもすると文化には、いつだって、どうしても、権力に擦り寄らなければならない宿命のようなモノがへばり付いているような気がしてならなかったわけ」

 文化と、権力、か~。

 たしかに、歴史を振り返ってみても、文化は、コトあるごとに権力に振り回され、翻弄され続けてきたような気はする。

 そういえば以前、ある狂言師が、ソレに似た内容のコトを語っていた。彼は、そんな中でもソレでも尚、600年以上続けられてきたコトそのものに深い意味がある、と、力強く言い添えていたことを、今でも、印象深く記憶している。多分、ソコに、翻弄されつつも動じない強さのようなモノを感じたからだろう。

 「当然のごとく、スポーツもまた文化。だから、申し訳ないが、どうしても、スポーツ選手は、それが本意であろうがなかろうが、権力に擦り寄らざるを得ない、と、思い込んでいたわけ。でもね、ある、引退したスポーツ選手のコメントを聞いて、十把(ジッパ)一絡げにして断定的に決めつけるのではなく、もっともっと、スポーツ選手一人ひとりに目を向けなければ、と、あらためて気付かされたような気がしたわけだ」

 あ~。

 ひょっとしたら、あの選手のコトかもしれない。

 「彼女は、心底、スポーツを純粋に愛しているんだよ。その熱い思いが、ある意味、決意とさえ感じられるそのコメントから滲み溢れ出ていたんだよね。素晴らしいよ。自分の気持ちに素直に、正直に生きていこう、というその姿勢に、心からエールを送りたいね」

 きっと、彼女のコトだ。

 権力側からの依頼など、ナニも考えずに、とりあえず、言われた通りにヤッてさえいれば、それなりにナンとなくコトは収まる。にもかかわらず、その内容によっては、頑(カタク)なに利用されるコトを拒み、己の考えを貫く。となると、当然、権力側からしてみれば、「思い通りにならないヤツ」ということにもなりかねない。それゆえ、彼女のコレからが心配になったりもするけれど、きっと彼女なら大丈夫。そんな気がする。 

 純粋な愛は、権力側のダークな思惑やら邪念やら打算やらを、必ずや打ち砕く。間違いない。(つづく)