ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1184

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と十五

「トサイゴッソウ ノ ススメ」

 「津軽じょっぱり

 ん?

 「肥後もっこす

 んん?

 「土佐いごっそう」

 んん、んあ、あっ。

 「ソレって、たしか、日本三大頑固、って、ヤツですよね」

 「そうそう、それそれ。他の追随を許さないこの国屈指の三大、頑固」

 私の父親が高知県出身ということもあって、とくに「土佐いごっそう」のことは、以前から存じ上げている。そして、当然の如く、我が父は、ご多分に漏れず筋金入りの「頑固者」であった。

 「そんな、愛おしくも頼もしい『頑固』、で、あるからこそ、単独では少々心許(モト)ない『若者たちよ、へそ曲がり、たれ!』に、最強の助っ人として『若者たちよ、頑固、たれ!』を、と、考えたわけよ」

 へそ曲がり、に、頑固、を、か~。

 おっしゃる通り、最強の助っ人になりそうだ。

 「へそ曲がりに、頑固。ついでにソコに、先ほどの『人たらし』まで加われば、もう、無敵でしょ」

 「無敵?。無敵かどうかはわからないけれど、権力者たちにとって、都合のいい若者ではないよな」

 へそ曲がり、頑固、人たらし。たしかに、このトリオ、あの人たちにとって都合がいいとは思えない。

 「ただし」

 ん?

 「とくに、この頑固。って、ヤツは、その『質』次第でトンでもなく厄介なモノになり得る」

 頑固のその質、次第?

 「頑固の素晴らしさは、ナニがナンでも正義を貫く。意地でも真実を追求する。口が裂けても『致し方ない』とは言わない。に、あるはず。にもかかわらず、そうした真っ当な頑固のベクトルが、ナニかの弾みでその真逆を向いてしまったとしたら」

 ん~、同じ、同じ無敵でも、無敵の悪魔にもなり得る、ということか。

 「それ、かなり厄介ですね」

 「そう、かなり厄介。頑固に限らず、へそ曲がりも人たらしも、その質が、そのベクトルが、常に問われる」

 ん~、たしかに、問われる。

 無敵の悪魔ほど、タチが悪いモノはない。

 「もちろん、一概には言えないだろうけど、僕はね、『土佐いごっそう』のそのド真ん中にある反権威主義的なテイストが、結構、気に入っているわけ」

 反権威主義的な、テイスト、か~。

 「頑固が、その『土佐いごっそう』の精神をもち続けさえいれば、あるいは、見失うような愚かなコトさえしなければ、罷(マカ)り間違ってもそのベクトルが真逆を向くなどということはあり得ない、と、思っている」

 なるほど、なるほどな~。

 ちなみに、高知県出身だからなのか、見事なまでに頑固者であった私の父親だが、残念ながら、「反権威主義的」とは全くもって無縁の、ごく普通の古い価値観まみれの父親であった、ということだけは、自信をもって言える。(つづく)