ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1174

はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と五

「アナタガ ダメダカラ」

 「仮に、たとえば、コックさんが」

 コ、コックさん!?

 久しぶりに聞いたな、その「コックさん」。

 おそらく、ほぼ、絶滅危惧種。死語。今は「シェフ」、かな。

 「食材がダメだから美味しくできない、と、不平を漏らし」

 ん?

 「生産者さんが、調理がダメだから食材が活かされない、と、嘆く」

 あ~。

 「その手の『あなたがダメだから』系の話って、時折、耳にしますよね」

 「自分の立場が悪くなると相手のせいにして、だから仕方ないんだよ、みたいなノリが、様々な世界で、場面で、結構、幅を利かせている」

 でも、そういう私も、どうしても、ついつい相手のせい、周りのせい、に、しがちだ。と、いうか、そうやって、人のせいにしながら今まで生きてきたような気がする。

 「とはいえ、ソレで気が済むなら、ま、ソレもいいかな、と、いう思いもある」

 消極的ながらも、一応、同感。

 「ただし」

 ん?

 「大きな責任を担っている者は、冗談でも相手のせいにすべきではない」

 んん?

 「たとえば、与党が、ついでに、偏ったメディアも、ほら、よく、『野党がダメだから』って、宣ったりするよね。与党がダメなのは野党がダメだから、みたいな」

 ん、あ、あ~。

 「アレって、僕が勉強が苦手なのは、親のせい、学校の先生のせい、悪友たちのせい、と、ほぼ同レベル」

 たしかに。

 「お子ちゃまが、悔しさ、歯がゆさ、腹立たしさ、情けなさ、を、紛らすために、『周りのみんながダメだからだ~』って吠えるのは、百歩譲って『ま、いいか~』としよう。だけど、だけどだ。圧倒的な権力を握り、大きな責任を担っている者が、『だって、アイツがダメだから、アレのせいで、こんなコトになっちゃったんだ。むしろ、被害者なんだよ~、僕は』、などと、ほざくことは、千歩、いや、万歩譲っても『ま、いいか~』とはならんだろ、ならんよな、普通」

 ならない。

 そう簡単には、加害者は、被害者にはならない。

(つづく)