はしご酒(Aくんのアトリエ) その六百と五
「アナタガ ダメダカラ」
「仮に、たとえば、コックさんが」
コ、コックさん!?
久しぶりに聞いたな、その「コックさん」。
おそらく、ほぼ、絶滅危惧種。死語。今は「シェフ」、かな。
「食材がダメだから美味しくできない、と、不平を漏らし」
ん?
「生産者さんが、調理がダメだから食材が活かされない、と、嘆く」
あ~。
「その手の『あなたがダメだから』系の話って、時折、耳にしますよね」
「自分の立場が悪くなると相手のせいにして、だから仕方ないんだよ、みたいなノリが、様々な世界で、場面で、結構、幅を利かせている」
でも、そういう私も、どうしても、ついつい相手のせい、周りのせい、に、しがちだ。と、いうか、そうやって、人のせいにしながら今まで生きてきたような気がする。
「とはいえ、ソレで気が済むなら、ま、ソレもいいかな、と、いう思いもある」
消極的ながらも、一応、同感。
「ただし」
ん?
「大きな責任を担っている者は、冗談でも相手のせいにすべきではない」
んん?
「たとえば、与党が、ついでに、偏ったメディアも、ほら、よく、『野党がダメだから』って、宣ったりするよね。与党がダメなのは野党がダメだから、みたいな」
ん、あ、あ~。
「アレって、僕が勉強が苦手なのは、親のせい、学校の先生のせい、悪友たちのせい、と、ほぼ同レベル」
たしかに。
「お子ちゃまが、悔しさ、歯がゆさ、腹立たしさ、情けなさ、を、紛らすために、『周りのみんながダメだからだ~』って吠えるのは、百歩譲って『ま、いいか~』としよう。だけど、だけどだ。圧倒的な権力を握り、大きな責任を担っている者が、『だって、アイツがダメだから、アレのせいで、こんなコトになっちゃったんだ。むしろ、被害者なんだよ~、僕は』、などと、ほざくことは、千歩、いや、万歩譲っても『ま、いいか~』とはならんだろ、ならんよな、普通」
ならない。
そう簡単には、加害者は、被害者にはならない。
(つづく)