ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1145

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と七十六

「ナクナッタヒト ヲ トカ ナクナッタヒト ノ トカ」

 「この国の、伝統的なモノの考え方の一つに、『亡くなった人を』、とか、『亡くなった人の』、とか、といったコトが、あるだろ」、と、思いっ切り唐突に、Aくん。

 亡くなった人を? 

 亡くなった人の?

 「いわゆる、死屍(シシ)に、死者に、鞭(ムチ)を打つようなコトはするな。ってヤツだ」 

 あ~。使者に、鞭打つ、か~。

 「亡くなった人に対して、アレコレ、ドウコウ、言うコトを、好まないんだよ、この国は」 

 ソレ、あるかもしれない。

 「だから、その人が、過去、ヤラかした諸々のトンでもないコトには、この際、目を瞑(ツブ)る」

 ん?

 「亡くなられたのだから、もうイイだろ」

 んん?

 「つまり、要するに、亡くなられた人を、その死を、ナゼ、冒涜(ボウトク)する?。亡くなられた人の責任を、ナゼ、残された者が、代わりに、取らなければならない?。みたいな、そんな感じだ」

 ん~。

 「コレ、ドコからドウ考えても、ダメだろ」

 内容にもよるかとは思うが、たとえ、ヤラかしたその人が亡くなったとしても、あまりにも悲痛過ぎる思いに、沈む、沈み込む、被害者は、紛れもなくソコにおられるわけだ。それゆえ、コトは、「亡くなられたのだから、もうイイだろ」で済ませられるほど、単純でも簡単でもないはずだ。

 「ただし」

 ん?

 「ただし、亡くなられた方が、圧倒的な弱者で、ある、場合の、その後は、いわゆる強者と、根本的に、180°、大きく違ってきたりするわけよ」

 んん?

 「たとえば、あの、追い詰められて自ら命を絶った、夢多き若手官僚も、入管施設で命を、不本意にも落とさざるを得なかったスリランカ人の女性も、その後、国に、世間に、温かく、寄り添ってもらえた、とは、到底、思えないんだよな」

 つまり、・・・。

 「つまり、ソレなりに、世の中に『恩』を、売りまくってきた者だけが、亡くなった後、忖度してもらえる。と、いうことですか」

 「圧倒的弱者の命は、生前も、死後も、思いっ切り軽んじられる、踏みにじられる、ということだ」

 ん、ん、ん~。

 ま、まさに、使者に鞭打つ、ならぬ、弱者に、弱者に鞭打つ、か。

 亡くなった、亡くなられた、人を、とか、人の、とか、と、エラそうに宣う前に、ココは、意地でも、公平に、平等に、正真正銘の正義を、正義の筋を、通せよ、通してみろよ、と、マジで思う。(つづく)