はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と八十九
「フェアトレード カラ ダイレクトトレード ヘ」
実に勝手に、悦に入って、「国会1日3億円」論をぶちかましていると、いつのまにか、Aくん、またまた目の前から消えていた。
そのAくんが、「ひょっとしたら、この、貰い物のチョコが合うかもしれない」と、いつになく、大慌てでデンしてUターン。目の前で、その白い袋をビリリと引き裂く。
「カンボジアのオーガニックカカオ豆。に、天然パームシュガー。マジで頑張っているらしいんだよな~。すごいよ、こういうのって。ホントに、すごい」
そう言いながら、スティック状のチョコを小皿の上にポロリポロリと載っけてみせる。
おそらく、ワインだろ。できれば、ロゼか、先ほどのオレンジか。そのあたりが合うんじゃないかな、と、思いはしたが、もちろん、そんなこと、言えるわけもなく、あえて、沈黙のまま、その一つを摘まんでみる。
おっ。
スパイシー。
混じりっ気なしのワイルド感が、面白い。
ソレを追いかけるようにして、新潟のコシヒカリをグビリとやる。
わおっ。
かなり、いいかもしれない。
いや、いい。間違いなく、合う。
「カンボジアの現実に立ち向かう、その姿勢が、リアルに見える、そんなチョコらしいんだよね」
カンボジアの現実、か~。
「時代は、フェアトレードから『ダイレクトトレード』へ、なのかもしれないな」
ダイレクトトレード、へ?
「たとえば、オリンピックやら万博やらといったビッグイベントで、いつだって、話題にも問題にもなる中間マージン。そんな、トンでもない『中抜き』、中間マージンを、一切省いて、末端で働くピーポーたちのために、ダイレクトに、ストレートに、取り組んでいこうとするその姿勢、応援したくなるよな~」
素晴らしい。
まさに、ピュアで、エシカル。
「このチョコのように、世界中が、ピュアで、エシカルなモノになれば、いいですね」
(つづく)