はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と七十八
「オマユウ オクメンモナク ドノツラサゲテ ナニヲ イウ」
「おまゆう」
ん?
「お前が言うな」
んん?
「臆面もなく、どの面(ツラ)下げて、ナニを言う」
んんん?
「今まで、いい加減な言動に明け暮れてきたにもかかわらず、そんな過去を全て、綺麗サッパリなかったコトにして、妙にエラそうに正論をぶちかます」
「わ、私のコトですか」
「違う、違う。この『おまゆう』の是非について、君の意見を聞かせてもらおうと思ってね」
「お、おまゆう、の、ですか」
おまゆう。お前が言うな。臆面もなく、どの面下げてナニを言う、か~。
「私は、正真正銘の正論であるなら、ソレは、ドコのダレが宣ったとしても正論だと思います」
「おっ、珍しく強気だね~。ダレが宣ったとしてもかい?」
マズかったかな。いや、そんなことはない。
「はい。ただし」
「ただし?」
「ただし、どんな過去があったのかにもよるとは思いますが、ソコは、やっぱり、キチッと清算しないと」
「清算?」
「まず、謝罪。単なる撤回ではダメです」
「謝罪?」
「謝罪すらできない者がエラそうに正論を宣っても、受け手が、よほどの人格者でない限り、そんな正論に耳を傾ける者なんていないでしょうから」
「しかし、単なる上べだけの謝罪なんてのも、あったりするぜ」
単なる、上べだけの謝罪、か~。
「ん~・・・。いや、もう、上べだけでもナンでもいいです。やっぱり、正論は、ダレが宣っても、正論だと思います」
「いいね~。つまり、つまりだ。ドコのダレが宣ったかで、場合によっては、正しきコトが正しくないコトになる、なんてことは、絶対に、ない。と」
ない。絶対に、ない。
大丈夫だ。自分の考えに自信をもとう。
「そうです。正しき意見には耳を傾けないと。シッカリと受け止めないと」
「相手を打ちのめすコトよりも、己の成長が大事。ってコトだな」
「その通りです」
と、エラそうに宣ってはみたものの、どうしても、おもわず「お前が言うな」などと思って、口走って、しまいがちだ。でも、ソコはグッと堪(コラ)えて、正しき意見は、ナニがナンでも自分の肥やしにするんだ。と、意地でも己自身に言い聞かせたい。(つづく)