ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1109

はしご酒(Aくんのアトリエ) その五百と四十

「オクソクデ ヒトヲ オイコム?」

 憶測で、他人(ヒト)を追い込む?

 ナゼ、ナゼなのだろう。

 「ナゼ、人は、憶測で、他人を追い込むのでしょう」、と私。

 するとAくん、「ま、その理由はマチマチなんだろうけれど」と前置きした上で、思い付いた幾つかを次々に挙げ始める。

 「その他人が嫌い。追い込むことで満足感が得られる。楽しい。妙にスッキリする。もしくは、知人に頼まれた。アルバイト。あるいは、ただ正しきコトを言わせてもらっただけ。天に代わって成敗。この手の、ちょっと危険で厄介な正義感ってヤツも、結構、あったりするのかもな」

 危険で厄介な正義感、か~。

 「しかし、どんな理由であれ、追い込まれた側は、そんな理由など関係なく、深く傷付き、そして、トンでもなく深く、深く追い込まれてしまう、というわけだ」

 Aくんが言うように、仮に、ナンの根拠もないにもかかわらず、そうした理由で他人を追い込むなどというコトが正当化されてしまったとしたら、と、想像しただけで、イヤになるほど気持ちが重くなる。

 「しかしながら、権力者が、『他人を追い込んではいけない』などと宣い出し、法整備の必要性まで訴え始めたとしたら、要注意。必ずや、ソコには、二つの側面があることを、僕たちは忘れてはいけない」

 ん?

 「その、一つめの側面、ソレは、真っ当に、弱者救済。圧倒的に弱い人たちを、ただ、ひたすら守りたい。助けたい。と、いう、その一心。そのための学校教育の充実。法整備。ソコに、問題があるとは、到底、思えない」

 私も、同感。問題があるとは思えない。

 「問題なのは、もう一つの側面。ソレは、弱者救済を装った言論弾圧

 げ、言論弾圧

 「市民による権力者たちへの批判を、単なる『誹謗中傷』と捉えて取り締まる。コレによって、いわゆる口封じ訴訟、スラップ訴訟も起こしやすくなるし、有利に展開できるようにもなる。と、いう、ドコまでも狡(コス)い、オキテ破りの禁じ手だ」

 な、なんと。

 「つまり、大いなる過ちを犯している、あるいは、犯そうとしている権力者たちに対する批判を、法の力で抑え込もうとするわけだ。トンでもなく姑息な手口だとは思わないかい」

 思います、思いますとも。

(つづく)