はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と九十六
「セイジカハ ツネニ コクミンニ メヲ ムケロ ホウアン」
「こんな法案を国会で通してくれれば、今よりは、結構いい感じになるんじゃないかな」、とAくん。
「ほ、法案ですか」
なんだか話が大きくなる、予感。
「政治家自身を律する法案だけに、怒濤の反対に遭ってしまうかもしれないけれど、ココまでイロイロと情けないコトで溢れかえってくると、さすがに、もう、あの人たちも、闇雲に、露骨に、反対するわけにはいかないんじゃないの」
「で、どんな法案なのですか」
「政治家は」
「政治家は?」
「政治家は、常に国民に目を向けろ、法案」
「いい、それ、いいかもしれません。意外にサクッと通ってしまうかも」
「反対する、ということは、ナゼ、国民なんかに目を向けなきゃいけないんだ、ってコトだからな。さすがのあの人たちも、そう簡単には反対なんてできないはずだ」
「でも」
「ん?」
「でも、ナニがあろうと揺るがない岩盤支持者たちも、甘い汁を求めて近付く者たちも、当然のごとく国民なわけですからね。結局は、『国民の方に目を向けているじゃないか、国民のために頑張っているじゃないか』ってことになるんじゃないですか」
「そうくるか~。ん~、そうくるよな~、間違いなく、あの人たちは」
「だから、国民の前に『全ての』を付ければいいと思います。きっと、コレを付けることで、言い訳、言い逃れ、が、一気に難しくなるでしょうから」
「いいね、それ、いいよ。政治家は、常に全ての国民に目を向けろ、法案」
「ただ」
「ただ?」
「ただ、言い訳、言い逃れ、が、しにくくなった分、ナンやカンやと御託を並べて、意地でも廃案に持ち込もうとするかもしれませんね。いや、それどころか、全ての国民に目を向けなきゃならないのなら、目を向けなければ罰せられるというのなら、そんなのメチャクチャ邪魔臭そうだし、もう、政治家になんてなろうと思わなくなるかも」
するとAくん、呆れ果てるように、吐き捨てるように、ジンワリと苦い怒りも交えて、ボソリと。
「なんだよ、ソレ」
(つづく)