ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.1066

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と九十七

「パンノミミ リロン」

 「たとえば食パンの」

 「えっ?」

 「そのパンの耳を粗末にしない、どころか、むしろ、本体の部分よりも美味しくいただく、みたいなコトが、きっと、この星に、この星の未来に、とって、大切なコトなんだろうな」

 いつもの唐突さで、面舵いっぱい、一気に話題を変えてみせた、Aくん。政治家は斯(カ)くあるべし、から、の、パンの耳だけに、さすがに面喰らう。

 「野菜も、どうすれば生ゴミにしなくて済むか、ってコトを、この頃になって、ようやく、考えるようになったんだよな。メチャクチャ遅れ馳せながらだけれど」

 メチャクチャ遅れ馳せながらでも、そう考えるようになっただけで、Aくんはエライと思う。普通、そんなコト、まず考えない。

 「そのためには絶対、無農薬がイイわけで、できれば自分で野菜づくり、が、好ましいのだろうけれど、残念ながらそうもいかなくて。できる範囲内で無農薬野菜を購入するように、と、とりあえず決めてからは、できる限り、野菜は、皮ごと丸ごと食べるようとはしている」

 できれば、とか、できる範囲内で、とか、できる限り、とか、で、イイと思う。最初から高い目標を設定してしまうと、たいてい挫折してしまうから。

 「僕はね、コレを『パンの耳』理論と呼んでいる」

 パ、パンの耳?、あ、あ~、パンの耳、理論、か~。

 「もったいないからパンの耳も食べる、ではなくて、むしろ本体部分よりも美味しく『耳』をいただく、というその発想の転換。とてもイイと思います」

 「お褒めいただき、ありがとう。嬉しいよ。で、遅れ馳せながら気付いたのだけれど、野菜は、皮ごと野菜が圧倒的に旨い。しかも、栄養価もウンと高くなるというから、一石二鳥、言うことなしだ」

 「そんな上手い具合に一石二鳥なら、プラスチックゴミを減らすコトよりは容易いかもしれませんね」

 「あ~、プラスチックゴミね、アイツは強敵だからな。いくら頑張っても、毎週毎週スゴい量が溜まってしまう」

 「生ゴミを減らす。もちろん、プラスチックゴミ同様、努力は必要だと思いますが、ヤリようによっては充分にヤレる。そんな気がします」

 「まずは、とりあえず、パンの耳理論で、生ゴミ撲滅に頑張ってみるよ」

(つづく)