はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と百と五十八
「キョウキ ガ キタリテ クニノタカラ ヲ ホウムリサル」
コレほど愚かだとは思わなかった、と、コレ以上ないというぐらい呆れ果てまくった表情で吐き捨てるように語り始めた、Aくん。
「ド、ドウしたのですか」
「一度失ってしまったら、もう二度と取り戻すことなんてできやしない本物の奇跡の芸術を、全くもって理解できない、理解しようともしない権力者たちが、そんな国の宝を守れない、守ろうともしない、という狂気。その狂気の、その、あまりの罪の深さに反吐さえ出そうになる」
「ナ、ナニがあったのですか」
メチャクチャ怒っている、というコトぐらいは、私にもわかるが、残念ながら、ソレ以上のコトはナニもわからない。
「先人たちがつくり出し守り続けてきた数多くの国宝を所蔵している博物館が、トンでもない光熱費の高騰からSOS(エスオーエス)を、救いを、助けを、求めているというのに、国は、ピクリとも動かない。どころか、そもそも国宝なんて国益に繋がらないだろ、お荷物なんだよ、知ったこっちゃないんだよ、みたいな、そんな国の、権力者たちの、狂気。ぼ、僕には、微塵も理解できそうにない」
あ~。
ナ、ナンということだ。
ソ、ソレが事実なら、あの人たちが考える国益って、ホントに、いったい、ナンなのだろう、と、マジで思ってしまう。ひょっとすると、「そんな、骨董品まがいのモノよりも、むしろ、国際的、経済的戦略のツールとして燦然と光輝くアニメ、そうアニメだろ。いつまでも、過去の遺物に振り回されているんじゃねえよ」、と、我々権力者のみならず一般ピーポーたちも思っているんだ、と、言いたいのかもしれないな。
「以前から、芸術の、美術、音楽の、その価値を軽んじる傾向はある、と、思ってはいたが、まさかココまでとは思わなかった。失望どころか、もう、絶望だよ、絶望」
絶望、か~。
そんな権力者たちが進もうとする道、は、少なくともAくんやら私やらが進まなければならない思っている、そう信じている、道、とは、全くもって違う道であるような気がする。
権力者たちの狂気が、その狂気が来たりて、国の宝を葬り去る。
(つづく)