はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と百と三十
「ヒラキナオッテ シロハタヲ アゲル?」
ダレかが甘い汁を吸う、そんな、偏ったダレかにとっては旨味のある政策の、その欠点にメスを入れることも見直すことも手を打つこともせず、そのままズッと捨て置き、いつのまにか、もう後戻りができないような、もう次の一手も打てないような、そんな情けない状況にしておいて、その責任がある当人が、ナゼか開き直って、妙に胸を張って、「今になってそんな手を打てばダイヘンなことになる」などと、まるで他人事のように宣う。コレって、居直り感に満ち満ちた、体(テイ)のいいギブアップ宣言だとは思わないかい、と、憤りやら不満やらで充満した彼の堪忍袋が、もう爆発寸前かのような勢いで語り始めた、Aくん。このアトリエの室温まで数度上昇したのでは、と、感じるほどの怒りのその熱量に、さすがに少したじろいでしまう。
「たとえば僕が、あまりに周囲の人たちが喜ぶものだから、ちょっと今だけ、と、オキテ破りの邪道に手を染めた、としよう」
「オキテ破りの邪道に、ですか」
「そう。ま、ちょっと今だけ、ならいいだろう、とね」
「ならいいだろう、とね。と、始めたその『ちょっと今だけ』が、ズルズルとそのままズッと、ということですか」
「そう、そういうこと。でだ、ズッと続けてしまったものだから、当然のごとくトンでもない『副反応』が押し寄せてくるわけだ」
「そりゃ、そうですよね。オキテ破りの邪道なわけですから」
「短期間で切り上げておけば、それなりにメリットもあったのだろうけれど、こうなってしまうと後の祭り。しかし、だからといって、これ以上こんなコトを続けるわけにもいかない。このままでは傷口が更に一層開いてしまい、ソレが致命傷にだってなりかねない。もちろん、今になって終止符を打つことのそのリスクは甚大なものだろうけれど、しかし、『責任を取る』ということは、そういうことなのではないのか、って、僕なんかは思うわけよ」
責任を取る、か~。
なるほど、そういうことか。
少なくとも、開き直って白旗を上げることが、責任を取る、ではない。ということぐらいは、こんな私でもわかる。(つづく)