ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.839

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と百と七十

「カクヘイキ ヘイキジャナイ!」

 ちょっとしたキッカケで、そのスキを突いて、「そ~らみたことか、やっぱり、核、核兵器核武装なんだよ」などと、なんの躊躇もなくサラリと、そこかしこで宣い出したりするわけよ、この国は、この星は、と、かなり物騒な臭いを放ちながら口火を切る、Aくん。そんなピーポーたちにとって、核兵器は、容赦なく、思い通りにコトを運ぶための、まるで、あたかも、万能の神かナニかのごとくの存在であるのかもしれないな、と、吐き捨てるように言い添える。

 酒の力も大いに借りて、アンタッチャブルな領域にまで踏み入って、ナニやらドンドンと、ソレなりに過激にも大きな声にもなっていく、Aくん。しかしながら、ソレこそがAくんらしさであり、むしろ、気持ちよく聞こえてくるような、そんな気さえする。とはいえ、ココがAくんのアトリエではなく、街中の居酒屋だったりすると、さすがにちょっとドギマギしてしまうかもしれないけれど。

 そして、さらにAくんは、ボリュームを上げて、吠える。

 「もちろん、そんなものは、愚かなる詭弁以外のナニものでもない。そもそも、核兵器は兵器じゃない」

 えっ?

 「僕が考える兵器の定義は、その場面だけで完結していないといけない、ということ」

 んっ?

 「もちろん、言うまでもなく、いかなる兵器に対しても、僕は、反旗を翻(ヒルガエ)している。のだけれど、ソレはソレとして、あえて兵器論を語らせてもらうとするならば、子どもたちにまで、未来にまで、この星全体にまで、影響を及ぼしかねない狂気の大量破壊殺戮兵器、核兵器は、もはや兵器じゃない」

 核兵器は、兵器じゃない、か~。

 「愚かなるモノ、兵器、にも、愚かなるモノなりのルールが、オキテが、越えてはいけない一線が、あるということだ」

 なんだか、納得できるような、できないような、そんな複雑な思いで、心の中が澱む。

 Aくんには申し訳ないが、大体からして、兵器ごときが、ナニがルールだ、オキテだ、越えてはいけない一線だ、という思いが私にはある。どころか、政治家たるものが、そういった「兵器」やら「核兵器」やら「核武装」やらといった愚かなるワードを安易に口にしたその時点で、すでに、もう、そんなものは、政治家でもナンでもない、とさえ思っている。

 ハナから、政治家と権力者とは違うのだ。ましてや、独裁者なんぞというものとは、その根っこからして全くもって違うのである。本物の、真っ当なプロの政治家は、安易に、そのような愚かなるワードを吐いたりはしない。

 そして、心底、思う。

 核兵器、のみならず、ありとあらゆる全ての兵器、の、その存在そのものが、全然、平気じゃない。(つづく)