はしご酒(Aくんのアトリエ) その四十五
「ザッツ ノーベルショー!」
「ノーベルって、ダイナマイトですよね」
この際と思い、今しがた、突然プクリと湧き起こった思い付きのその「泡」を、Aくんの目の前でパチンと弾(ハジ)かせてみせる。
その弾けた音に驚いたのか、「ノ、ノーベルって、あ、あの、ノーベル賞の、かい?」、の、その声は、いつものAくんのその声よりも、ナン割り増しかカン高い。
「そうです。彼って、ダイナマイトをつくったわけでしょ」
「そうそう。随分と儲けたらしい」
「ソコからのノーベル賞ですよね」
「そう、その通り。一見、相反するもののように見える両者は、間違いなく繋がっている」
「その、ソコにこそ、ノーベル賞の理念の全てがあるような気がするのです」
「ほ~」
「ノーベル賞は、ナニがナンでも平和賞でなければならない。その平和賞の中に化学やら経済やら文学やらといった様々な部門が設けられているに過ぎない、とさえ思っています」
「つまり、ダイナマイトも、その使い方を誤ると、単なる破壊でしかない、と」
「その通りです。どんなに素晴らしいものであっても、ソレを扱う人類がバカ丸出しでは、毒にも平気にもなり得る、ということです」
「なるほど、ザッツノーベルショーは、平和のショー、平和の祭典、でなければならない、ということだな」
誰がどう考えても、それは、当たり前のことだと思うような、そんなことであったとしても、ノーベル賞に限らず、平和の祭典だ~、などと、偉そうに宣っているわりには、そうした理念もナニもカも吹っ飛ばして、政治まみれ、金(カネ)まみれ、邪念まみれ、ということが、悲しいかな、ソこカシこで見受けられたりするものだから、切に、切に、そうであってほしいと、平和のショーであってほしいと、平和の祭典であってほしいと、願うのでる。(つづく)