ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.411

はしご酒(4軒目) その百と六十二

「ヨウカイ イロガツクツクボウシ ノ キョウフ」③

 それでも気持ちを切り替えて、未消化のうちの一つについて問うてみる。

 「いったいナニが、ソコにへばりついているんですか」

 するとAくんは、少し黙考したあと、ユルリと語り始める。

 「少し目先を変えてみよう。色がつく。色がつく、ということを、人一倍恐れる業界がある。とくに、夢を売る業界。たとえば、芸能関係あたりが、このことに、ことのほか神経質なような気がする。なぜ、色がつく、ということに、そこまで神経質になるのか。ソコにもまた、この国が抱える深い闇があるのでは、と、僕は思っている」、とAくん。

 「色がつく、ことに、ですか」

 「そう。色がつくことのリスクだな」

 想定外の目先の変更に、少し戸惑う。リスクになりうるその「色」とは、はたしていったいナンなのか、そのコトも含めて、そのあたり一帯が、ナゾに包まれ始める。

 「役者であれ歌手であれ、思想的に無色であることが無難、だということなのだろうな、おそらく」

 余計なことなど考えなくていい、ましてや、巨大なものに対して、批判めいた発言をすることなど以ての外(モッテノホカ)、と、かなりの上から目線で、彼らに、彼女らに、色がつくことを防止しようと躍起になる妖怪「イロガツクツクボウシ」。ソコから漂う怪しげな恐怖のその要因は、やはり、ソコには、身勝手ではない正真正銘の愛が、ない、ということだと思う、というAくんの、その実にAくんらしい補足を、「なるほど~」などと思いつつ聞いているその尻から、またまた新たな疑問が、放屁のように、プッと飛び出してきたりするものだから、この世はホントにヤヤこしい。(つづく)