ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.742

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と八十三

「フケヨカゼ ヨベヨアラシ!」

 ココにきて、若干、ハードロックからキョリを置きつつあるような、そんな気もしなくはないAくんではあるけれど、それでもやはり、ナニかの弾みで、ソレ系の話題になったりすると、そのままその前を素通りするようなことは、まず、ないだろう。

 そう思えてしまうほど、やっぱりAくんには、あの頃の、クラシカルなハードロックがよく似合う。

 ソレと同じように、あの頃の、リングに、これ以上ないと思えるほどよく似合っていた、そんなプログレッシブなハードロックがあった。

 幼少期の私が目(マ)の当たりにしたソレは、まさに、究極の入場テーマ曲であったのである。

 「♪ワン・オブ・ジーズ・デイズ(One of These Days)、ご存知ですか」

 「あ~、吹けよ風、呼べよ嵐、ね。もちろん、存じ上げている」

 さすが、Aくん。

 ワン・オブ・ジーズ・デイズ、で、「あ~」、と、サラリと言ってのけられる人など、そうはいない。

 Aくんのご明察通り、♪吹けよ風、呼べよ嵐、で、ある。

 「たしか、ほら、あの、黒い呪術師アブドーラ・ブッチャーの入場テーマ曲、だったよね」

 「そ、そうです」

 なんだか私の心の中を、思いっ切り覗かれているようで、驚く。

 「奇跡の邦題、『吹けよ風、呼べよ嵐』。よくもまあ、こんな極上の邦題を思い付けたものだよな~」

 「おっしゃる通り。この邦題によって、よりパワーアップした、♪ワン・オブ・ジーズ・デイズ。で、血湧き肉踊り、血糖値までもがグンと上がったような気がしたものです」

 するとAくん、「血糖値まで上がったかどうかは僕にはわからないけれど、少なくとも、ブッチャーが上がったリングに漂っていた邪念やら邪気やら澱(ヨド)みやらは、間違いなく、その、清き風で、清き嵐で、吹き飛ばせたと思う」、と。

 邪念やら、邪気やら、澱みやら、は、吹き飛ばせたと思う、か~。

 そうか、なるほど、そういうことか。

 Aくんイチオシのピンク・フロイドの名盤『おせっかい』のA面の一曲目、♪吹けよ風、呼べよ嵐。そういうことであるならば、たとえば、国会が開会される時などには必ず、議員たちの入場テーマ曲として、是非とも、この♪吹けよ風、呼べよ嵐、を、議事堂内に大音量で流してもらいたいものだ、と、結構マジに、思ったりする。(つづく)