ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.736

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と七十七

「ナラティブ!」②

 「苦労人だとか、叩き上げだとか、さらには、苦学して超高学歴だとか、というようなことなど、この際どうでもよくて、その結果、今、その人は、どうなんだ、に、尽きると思う」

 つまり、心を惑わすような物語も歴史もドラマもいらない、ということか。でも、ナニかが引っ掛かる。

 「でも、最初に述べられていたように、ナラティブなナニかがソコにある、ことは、大切なことだと思うんです。この古びた万年筆にしても、単なるモノではなくなるわけでしょ。物語は、そのモノに膨らみをもたせる」

 「なるほど、膨らみ、ね~。いい表現だ。けれど、けれどだ、むしろ、その膨らみがアダとなる、ってこともある」

 「アダとなる、ですか」

 「そう、アダとなる。つまり、その膨らみってヤツが、悪さをしでかす」

 悪さを、しでかす、とは。

 「言い方を変えるとするならば、オキテ破りの誇大広告やら歪曲広告やら捏造広告やらが、姑息なイメージアップ戦略の片棒を担ぐ、ということだ。しかも、そういった広告を得意とする広告代理店みたいなものまで暗躍し始めたりする始末。もう、世も末かもな」

 

 フ~・・・。

 

 私の口からなのか、それとも、ひょっとすると、この万年筆からなのか、はたまた、両者によるデュエットであったのか、おもわず漏れ出た溜め息は、力なく地を這って消えていく。(つづく)