ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.696

はしご酒(Aくんのアトリエ) その百と三十七

「クリティカル フレンド」

 クリティカル(critical )という英単語があるんだけど、と、毎度のことながら、随分と唐突に語り出した、Aくん。

 「ク、クリティカル、ですか」

 「そう、クリティカル。聞いたことないかい」

 全くもって初耳である。

 「ないです。初めて耳にします」

 「このクリティカル、致命的という意味と批判的という意味との豪華二本立てなんだけれど、その後ろにフレンドがくっ付くと、更に、こんな今だからこその大切な意味合いをもち始める」

 この今だからこその大切な意味合い、とは。

 「クリティカルフレンド、この存在の有無が、その人間の成長に大きく関わってくる、という、そんな話」

 ど、どんな話だ?

 「直訳すると、致命的な友だち、批判的な友だち、ってことになるんだろうけれど、実際の意味は、もう少しグチャッと入り組んでいる」

 グチャッと入り組んでいる?

 「つまり、たとえば君が、致命的な考え方をしようとしている、している、あるいは、致命的な状況に身を投じようとしている、投じている、というまさにその時、君の周りに、そんな君に対して、批判的な人間はいるかい、いないのかい、さ、どっちだ、みたいな、そういうことなんだな」

 私の周りに、私を批判する、人間・・・。

 「で、ココで、もっとも重要な点、ソレは、それでも大切なフレンドなんだ、ということ」

 迷える私を批判してくれる、フレンド・・・。

 「僕はね、余程の人格者でない限り、権力を握れば握るほど人は、そんなクリティカルフレンドをもてなくなる、もとうとも思わなくなる、寄せ付けなくなる、寄せ付けようとも思わなくなる、んじゃないか、って、どうしても思ってしまうんだよね」

 う~ん、・・・、なるほど、なるほどな~。

 あたかも、それはまるで、権力に媚びへつらい、群がる、そんな忖度まみれのピーポーたちばかりを周囲に置いて、「余は満足じゃ~」、と、したり顔で闊歩する、あの、裸の王様だ。(つづく)