ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.459

はしご酒(4軒目) その百と百

「トンデモナイコトガ⑶ 」②

 「ソウではない、もう一つのソウ、そのソウとはね」

 「そのソウとは?」

 「そのソウとは、実は、こんなトンでもないことが起こっているときに、なぜ選挙なんだ、そんなこと、やっている場合じゃないだろ、という、ソウいうソウだったんだな」

 なるほど、・・・、そんなこと、そのDJの言葉から、全く想像もしなかった。

 「けれど、DJといえばトークのプロですよね。それにしては、なぜ、そんな、誤解を招くような回りくどい物言いをしたのでしょう」、という素朴な私の疑問にAくんは、あくまでも僕の推測だけど、と、そう前置きした上で、「政治的なコメントというのは、どうしてもね、とくに、体制批判めいたものは御法度、ということなんだろうな、おそらく」、と。

 おもわず、なんとはなしに、背中の真ん中あたりがゾゾッとする。

 「でもね、僕が、いま、ココで、言いたいコトは、そのコトなのではなくて、その言葉の、その、言葉で伝えたいコトの、その、難しさ、その、怖さ、という、まさにソコの、その、なんだ」

 実にAくんらしい、ヤヤこしい言い回しではあるけれど、ようするに、Aくんが言いたいコト、それは、自分の思いや考えを、確実に相手に伝えたいとき、そう強く思うときは、余計なことに心を乱されたり、惑わされたり、している場合ではない、というコトなのだろう。

 そして、Aくんのトドメの言葉が、冷たく燃えるように、響く。

 「素直に、ストレートに、クリアな言葉で、伝えたいことを語る。そうでなければ、相手に伝えたいことが、間違ったかたちで伝わってしまうかもしれないし、場合によっては、誰かに、都合のいいように、上手い具合に、利用されてしまうかもしれないぞ、君の言葉は・・・、ってことだな」

(つづく)