ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.409

はしご酒(4軒目) その百と六十

「ヨウカイ イロガツクツクボウシ ノ キョウフ」①

 島国であるこの国(に限ったことではないのかもしれないけれど)に、古くからまかり通る、言わぬが花、沈黙は金(キン)、という摩訶不思議な美徳について、もう少し深く考えてみたくなる。

 この小さな島国特有の、コミュニティの高すぎる密度ゆえに、ヤミクモに、ナンでもカンでもベラベラと喋ったりしていると、ソコにピキピキと亀裂が入ったり、ソコからプスプスと悪臭がしてきたり、することで、コミュニティそのものが崩壊する危険性がある、ということからの、言わぬが花、であり、沈黙は金、ということであったのだろうか。もちろん、その美徳は、現代まで脈々と受け継がれている。

 当然の如くAくんは、「それはダメだろう」、と、一刀両断である。そしてさらに、「どこからどう見ても、どこをどう考えても、それは正しくない、おかしい、と、いうとき、ましてや、ソコから致命的な悪臭が放たれ出しているそのとき、に、言わぬが花、沈黙は金、などと、呑気に言ってはいられないだろう」、と、少々語気を荒げる。

 「でも、ホントに正しくないのか、おかしいのか、ましてや、ソコから放たれ出している臭いが、致命的な悪臭なのかどうかなんてことは、そう簡単に、わかることじゃないでしょ」、と、まだ攻め込める余地が、辛うじて残されているその隙間に、思い切ってツッコミを入れてみる。

 「そう簡単に、わかることじゃないでしょ、ね~、そうくるか~、ほ~お、ほ~ほ~ほ~ほ~ほ~」、と、なんとなく不気味にほくそ笑むAくんに、おもわず身構える私。(つづく)