ガッコ ノ センセ ノ オトモダチ vol.457

はしご酒(4軒目) その百と九十八

「トンデモナイコトガ ⑵ 」

 欲望という魔物に取り憑かれた人類が、もたらした温暖化による未曾有の災害を、天災でも人災でもなく、「人類災」と呼ぶ、Aくん。保険会社が、いつまでも、こうした人類災を、しつこく「天災」扱いすることに、憤りさえ覚えているようだ。

 とはいえ、やっぱり自然は、元からとことんパワフルで、そう易々とは侮れない。しかも、愚かなる人類への怒りも加わって、そのパワーは、さらなる進化を遂げつつある。となると、大いなる過ちを犯し続けている人類の進むべき道は、取るべき行動は・・・。

 「怒れる自然に対して、私たちにできることって、なんだと思いますか」、と私。

 コーヒー香とガーリックの、プレミアムなお肉をアテにAくんは、グビリとヒノヒカリ酒を呑んだあと、静かに目を閉じ、俯(ウツム)いてしまう。

 さすがのAくんも、なすすべなし、と、いったところか。つまり、それほど自然は、トンでもなく手強い、と、いうことなのだろう。

 ・・・・・

 「信玄堤(シンゲンヅツミ)!」、と、突然、Aくん。

 「な、なんなんですか、それ」、と、かなり、驚いてしまった、私。

 「ソコに、ヒントがある、かもしれない」

 「ヒントが、ですか」

 「そう。時と場合によっては、手がつけられなくなる暴れ川、そんな暴れ川に対する、剛と柔との合わせ技。とくに、剛が打ち破られたときを想定した、受けて流す柔の手立て。その手立てに、あの武田信玄の、底知れぬ英知と気概と覚悟を感じるんだな、僕は」

 Aくんイチオシの信玄堤。その信玄堤に込められた「柔」の真髄。

 興味が、ズンズンと湧いてくる。(つづく)