はしご酒(Aくんのアトリエ) その四十六
「ケンリョク ト ゲイジュツ ト」
世の中には、不気味で怪しい圧力が渦巻いている。にもかかわらず、その圧力を軽んじて、芸術の、たとえばその経済的な安定を図るがために、政治的な、その手の類(タグ)いの権力を、安易に都合よく、うまい具合に抱き込もうなどと目論んだりすると、逆に、芸術が、権力に抱き込まれ、その圧力に押し潰されそうになる、ということは、それほど珍しいことではない。つまり、政治は、政治がらみの権力は、クレイジーなまでに不気味で、怪しいエナジーに満ち満ちて、そう簡単には侮れない、ということだ。と、重く、吐き捨てるように捲し立てるAくん。
「政治やらナンやらとのソレなりな距離が、芸術の独立性という観点からも、大切だということですか」、と私。
「政治が、権力が、ハメを外したとき、脱線したとき、度が過ぎて、許しがたいほどのクレイジーさにまみれにまみれたとき、芸術は、どうするんだ、ということだ」、と、ボリュームアップした声で熱く語ったあとAくんは、学校の先生に成り立てのあの頃に、ストンとタイムスリップする。(つづく)